Gift

049. 迷子

１

「そうじゃない！
もっと精神を統一して！」

 「は、はいっ！」



 魔法使いのエルザは、毎日、孫のメラに魔法を教えていた。
 熱心なエルザに応えるように、幼い頃から一日も休むことなく、メラは必死に魔法の練習を続けていた。



そんなある日のこと…



「メラ！早く起きなさい！」

 「は、はいっ！」

 「今日が何の日か、忘れちゃいないだろうね！？」

 「はい、もちろんです！」

そう、今日は試練の日…
言わば、卒業試験のようなものだ。



 「この試練を乗り越えたら、おまえを一人前の魔法使いと認めよう。」

 「は、はいっ！頑張ります！」

エルザは、山を降り谷を下り、洞穴の前に立ってメラに話しかけた。



 「良いかい？この中では、絶対に声を出さないこと、どんなことがあってもだよ。
 声を出してしまったら、おまえは魔法使いにはなれない。わかったね？」

 「はい、おばあさま！
 私は決して声を出しません！
では、行ってまいります！」

 洞窟の入り口で立ち止まり、メラは炎の精を呼んだ。



 「出でよ、ギルバート！」

メラが叫ぶと、メラの顔と同じくらいの大きさの火が現れた。



 「やぁ、メラ！」

 「ギルバート、今から洞穴に入るから周りを照らして！」

 「あぁ、お安い御用さ。
ご褒美は飴玉で良いよ、この間の水色の甘いやつ。」

 「あれは水の気を持った飴玉よ。
あなたが食べたら火が消えちゃうかもよ。」

 「大丈夫さ、危険な味は魅力的なものだからね。」

 「わかったわ。洞窟から無事に出たらあげましょう。」

ギルバートの火を伴い、メラは洞窟の中に足を踏み入れた。