Gift

046. 血の盟約

２

「おまえ…名はなんという…」

低い声が、アルヴィンに向けられる。
ルシファーの傍にいるだけで、アルヴィンの身体は震えた。
彼から発せられる妖気のようなものが、アルヴィンの身体に絡みつくような感覚を与え、アルヴィンは人形のようにその場に立ち尽くし、ルシファーの深く青い湖のような瞳から目を逸らす事さえ出来なかった。



「……どうした？」

ルシファーにさらに問われ、アルヴィンは必死で声を絞り出す。



「は……はい、ルシファー様…！
私の名は…アルヴィンと申します。」

「アルヴィンか…良い名だ…
それに、良い目をしているな…」

アルヴィンの顎を親指で少し上向け、ルシファーは呟くようにそう言った。



「……私の元へ来るか？」

耳元で囁かれるその声に、アルヴィンの鼓動は速くなる。
ルシファーの言葉の意味はどういうことなのか？
これは自分にとってまたとないチャンスなのか、それともその逆なのか…
不安はあったが、いずれにせよ、ルシファーの誘いを断ることなどアルヴィンには出来るはずもなく…



「こ、光栄です…」

震える声で、アルヴィンはそう呟いた。



「身も心も私に捧げる覚悟はあるか…？」

アルヴィンは一瞬戸惑った表情を見せたが、次の瞬間、ゆっくりと頷いた。



「よし…では、行こうか…」

ルシファーに背中を支えられ、アルヴィンは歩き始めた。
その場にいた悪魔達が、アルヴィンに羨望の眼差しを投げかける。
アルヴィンの不安は、それよりも大きな期待にかき消されていた。

この瞬間から、自分の人生が大きく変わることをアルヴィンは確信した。