262 / 697
040. 月の慰め
4
しおりを挟む
*
「母さん、起きて!
母さん!信じられない事が起こったの!母さん!!」
けたたましく声をかけられエリーズは目を覚ました。
意識が戻った途端、エリーズは身体のあちこちが痛むのを感じ、思わず眉をひそめた。
どこが痛いのかさえよくわからない…急に胃のあたりを掴まれるような痛みが走ったかと思うと、背中が刺すように痛む。
今までに感じたことのない不快な症状をこらえ、エレーヌはファビエンヌの顔を見上げた。
「母さん…?どうかしたの?」
「ファビエンヌ…ごめんなさい。
私、どうしたのか今日はえらく具合が悪くて…」
そう言って身体を起こそうとした時、世界が回りエレーヌはなんともいえない気分の悪さにまたすぐに身を横たえた。
激しい動悸がしてエレーヌの顔からは汗が吹き出す。
「母さん、大丈夫?
一体、どうしたのかしら…
まるで私と母さんの身体が入れ替わったみたいだわ…」
その言葉に、エレーヌの脳裏をあの記憶が駆け巡った。
(そうだ…!
昨夜、ファビエンヌが寝ついた後、私は月の祠に行って…
ま…まさか…では、昨夜のあのことは…!)
昨夜、どうやって帰って来たのかもエレーヌは覚えてはいない。
女神と会話をしたのも夢の中の出来事のようにも感じられる。
だが、月の祠に行ったことだけは夢ではないはずだとエレーヌは考えた。
なぜなら、あの場所へは毎日欠かさずに行っているのだから。
「母さん…?」
ファビエンヌの声で、そんな物思いからエレーヌは現実に引き戻された。
「ファビエンヌ…あなた…!」
普段は、エリーズの助けを借りないと歩く事も出来ないファビエンヌが、一人でこの部屋に来ていることに気が付いたのだ。
「あなた、ここまで一人で来たの?!」
「ええ…!
今朝、目が覚めたら、私いつもと身体の調子がまるで違うことに気が付いたの…
いつもなら身体の痛みと気分の悪さが襲って来るのに、今日はどこも痛くないのよ!
それに、とてもおなかがすいてるの!
まるで、私の身体じゃないみたい!」
「……良かったわ…ファビエンヌ…
あなたはもう心配ないわ。
病気はもう治ったのよ…」
「まさか、そんな…
でも、本当にそうだったらどれほど幸せなことかしら…」
「本当に良かったわ…」
エリーズはファビエンヌの手を取り、涙を流した。
ファビエンヌはその後、日を追う毎に健康を取り戻し、それとは逆にエレーヌはどんどん衰弱していった。
やがて数ヶ月程が経った後、エレーヌはひっそりと旅立った…
「母さん、起きて!
母さん!信じられない事が起こったの!母さん!!」
けたたましく声をかけられエリーズは目を覚ました。
意識が戻った途端、エリーズは身体のあちこちが痛むのを感じ、思わず眉をひそめた。
どこが痛いのかさえよくわからない…急に胃のあたりを掴まれるような痛みが走ったかと思うと、背中が刺すように痛む。
今までに感じたことのない不快な症状をこらえ、エレーヌはファビエンヌの顔を見上げた。
「母さん…?どうかしたの?」
「ファビエンヌ…ごめんなさい。
私、どうしたのか今日はえらく具合が悪くて…」
そう言って身体を起こそうとした時、世界が回りエレーヌはなんともいえない気分の悪さにまたすぐに身を横たえた。
激しい動悸がしてエレーヌの顔からは汗が吹き出す。
「母さん、大丈夫?
一体、どうしたのかしら…
まるで私と母さんの身体が入れ替わったみたいだわ…」
その言葉に、エレーヌの脳裏をあの記憶が駆け巡った。
(そうだ…!
昨夜、ファビエンヌが寝ついた後、私は月の祠に行って…
ま…まさか…では、昨夜のあのことは…!)
昨夜、どうやって帰って来たのかもエレーヌは覚えてはいない。
女神と会話をしたのも夢の中の出来事のようにも感じられる。
だが、月の祠に行ったことだけは夢ではないはずだとエレーヌは考えた。
なぜなら、あの場所へは毎日欠かさずに行っているのだから。
「母さん…?」
ファビエンヌの声で、そんな物思いからエレーヌは現実に引き戻された。
「ファビエンヌ…あなた…!」
普段は、エリーズの助けを借りないと歩く事も出来ないファビエンヌが、一人でこの部屋に来ていることに気が付いたのだ。
「あなた、ここまで一人で来たの?!」
「ええ…!
今朝、目が覚めたら、私いつもと身体の調子がまるで違うことに気が付いたの…
いつもなら身体の痛みと気分の悪さが襲って来るのに、今日はどこも痛くないのよ!
それに、とてもおなかがすいてるの!
まるで、私の身体じゃないみたい!」
「……良かったわ…ファビエンヌ…
あなたはもう心配ないわ。
病気はもう治ったのよ…」
「まさか、そんな…
でも、本当にそうだったらどれほど幸せなことかしら…」
「本当に良かったわ…」
エリーズはファビエンヌの手を取り、涙を流した。
ファビエンヌはその後、日を追う毎に健康を取り戻し、それとは逆にエレーヌはどんどん衰弱していった。
やがて数ヶ月程が経った後、エレーヌはひっそりと旅立った…
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ヒロインは始まる前に退場していました
サクラ
ファンタジー
とある乙女ゲームの世界で目覚めたのは、原作を知らない一人の少女
産まれた時点で本来あるべき道筋を外れてしまっていた彼女は、知らない世界でどう生き抜くのか。
母の愛情、突然の別れ、事故からの死亡扱いで目覚めた場所はゴミ捨て場
捨てる神あれば拾う神あり?
人の温かさに触れて成長する少女に再び訪れる試練。
そして、本来のヒロインが現れない世界ではどんな未来が訪れるのか。
主人公が7歳になる頃までは平和、ホノボノが続きます。
ダークファンタジーになる予定でしたが、主人公ヴィオの天真爛漫キャラに ダーク要素は少なめとなっております。
同作品を『小説を読もう』『カクヨム』でも配信中。カクヨム先行となっております
追いつくまで しばらくの間 0時、12時の一日2話更新としております
【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!
くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました!
イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。
あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!?
長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!?
二人共あの小説のキャラクターじゃん!
そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!!
へっぽこじゃん!?!
しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!?
悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!!
とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。
※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。
それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください!
※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい
※不定期更新なります!
現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
幸福サーカス団
もちもちピノ
ホラー
幸福サーカス団
なんでも願いを叶えてくれるサーカス団のお話
幸福サーカス団とは
全ての人に幸せを提供するサーカス団
でも幸せにはルールがあるんだ
なんでもいいと言ってはダメ
願いを叶えたお客様は決して団員を傷つけてはいけない。
そして願いがどの方向に行ってもサーカス団に責任はない
そんなサーカス団とお客様と不思議な事件のお話
最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる