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ルカ(聖夜月ルカ)

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038. 星の乙女

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それからどうやって家まで戻ったのか、キップは全く覚えてはいなかった。



(そうか…
そうだったのか…
君には好きな人がいたんだね…)



キップの頬を、熱いものが流れて行った。







次の日、キップは畑仕事を休んだ。
心配して見に来たジョナサンには風邪をひいたと嘘を吐いた。
昨日の光景がずっと頭から離れない。
もう何もする気がせず、キップはずっとベッドで横になっていた。



「キップ!!遅いじゃないか!!」



夜になり、帽子を深くかぶった一人の男がキップの部屋の中に入って来た。



「父さん、俺、今日は体調が…」

「何ぃ?」

男は、キップの額を触ると、ベッドからキップを引っ張り出す。


「熱はない!大丈夫だ!
さぁ、行くぞ!!」

「そんな…父さん…」

抵抗するキップの腕をを無理やりひきずり、男はずんずん進んで行く。
そして、あたりに人気がないことを確かめると、キップを家の中にひっぱりこんだ。



「さ、こっちだ!!」

ここまで来たら、キップももう観念するしかなかった。
男にされるがまま、人形のようにじっとしていた。

男は、キップに化粧を施し、金髪のかつらをかぶせ、その顔をヴェールで覆った。



「さ、次は衣裳だ!早くしろ!!」

男に言われるままに、キップは煌びやかなドレスに身を包む。



「よし!じゃあ、行くぞ!!」

そこには、星の乙女・アストレイヤとなったキップがいた。



キップには子供の頃から人とは少し違った不思議な能力があった。
人の未来が見えるというものだ。
それに気付いたキップの父は、彼にお告げをさせ始めた。
キップのお告げははずれたことがない。
しかし、こういうものは、普通の坊主がやるよりも美しい少女がやった方が話題になると考えた父親は、キップを少女の姿にすることを思い付いた。
その目論みは、大当たり。
いつしか、キップは「星の乙女」と呼ばれるまでになったのだ。
それにちなんで名もアストレイヤと改めた。

薄暗い場所、しかも座ったままで声も出さないのだから、声や体格からキップが男だとバレることはない。
さらに、それがミステリアスな雰囲気を醸し出す結果にも繋がったというわけだ。

 
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