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033. 獣人
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(あいたたた…)
老婆は顔をしかめながらゆっくりと身体を伸ばし、握り拳で痛む腰をとんとんと叩いた。
(わしも落ちぶれたもんじゃのう…)
大きな溜息を吐き出すと、老婆は再び身をかがめ、群生する薬草を摘み始めた。
しばらく摘んでは腰を伸ばし、少しだけ場所を移動する…その動作を繰り返すうちに、籠にはいっぱいの薬草が集められていた。
(そろそろ帰るかな…)
いっぱいになった薬草に満足したように老婆は一人頷き、籠の傍へ歩み寄ったその時、老婆は目の端に映ったものに再び視線を戻した。
「こ、これは…!!」
老婆は、目にした物が信じられないかのように、眼鏡を額の上に持ち上げ目を何度も瞬かせてから俯いた。
そして、一呼吸置いて、もう一度、ゆっくりとその場所に視線を移す。
「なんと!!」
老婆は、興奮したようにそう叫ぶと、熱に浮かされたようにその場所に歩いていった。
「おぉ…!」
腰をかがめ、老婆が摘み取ったものは緑色のきのこだった。
僅かに震える両手で包み込んだきのこは時が経つごとにその色が変わって行く。
(間違いない!
これは幻の隠蔽茸じゃ!)
老婆のくすんだ頬に赤みが差し、その口許にはなんとも言えない幸せそうな笑みが宿った。
老婆は茸を懐に納め、それを両手でしっかりと抱き抱えながら、籠を担ぐことも忘れて山を降りた。
老婆は顔をしかめながらゆっくりと身体を伸ばし、握り拳で痛む腰をとんとんと叩いた。
(わしも落ちぶれたもんじゃのう…)
大きな溜息を吐き出すと、老婆は再び身をかがめ、群生する薬草を摘み始めた。
しばらく摘んでは腰を伸ばし、少しだけ場所を移動する…その動作を繰り返すうちに、籠にはいっぱいの薬草が集められていた。
(そろそろ帰るかな…)
いっぱいになった薬草に満足したように老婆は一人頷き、籠の傍へ歩み寄ったその時、老婆は目の端に映ったものに再び視線を戻した。
「こ、これは…!!」
老婆は、目にした物が信じられないかのように、眼鏡を額の上に持ち上げ目を何度も瞬かせてから俯いた。
そして、一呼吸置いて、もう一度、ゆっくりとその場所に視線を移す。
「なんと!!」
老婆は、興奮したようにそう叫ぶと、熱に浮かされたようにその場所に歩いていった。
「おぉ…!」
腰をかがめ、老婆が摘み取ったものは緑色のきのこだった。
僅かに震える両手で包み込んだきのこは時が経つごとにその色が変わって行く。
(間違いない!
これは幻の隠蔽茸じゃ!)
老婆のくすんだ頬に赤みが差し、その口許にはなんとも言えない幸せそうな笑みが宿った。
老婆は茸を懐に納め、それを両手でしっかりと抱き抱えながら、籠を担ぐことも忘れて山を降りた。
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