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032. 指輪
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「エクトル…父さんが…」
そう言うと、シルヴィの瞳からは大粒の涙が流れ出し、それ以上は言葉にならなかった。
幼い頃に母を亡くし、それから再婚もせずに男手一つでシルヴィを育ててくれた父が…
あの元気だった父が…
愛しい父の笑顔が頭に浮かぶ…
(父さん…なぜこんなことに…
………ま、まさか、私が指輪にあんなことを頼んだせいなの…?!
実家と農場を売れば、エクトルの借金はちょうど払えそうな額が手に入る…
そんな考えが脳裏をかすめたことは確かにあったが、実際にそんなことが出来るはずはない…
「シルヴィ!
それで家にはいつ帰るんだい?
家はすぐに売れそうなのか?」
「エクトル…父さんが死んだのよ…
そんなこと今言わなくても…」
「す、すまない。
だけど、僕も急いでるし…なんなら僕もついていこうか?」
大好きだったエクトルが、急に色褪せて見えた。
「大丈夫よ。私一人で行って来る…
明日の朝、発つわ。
悪いけど隣の部屋で休んで。今夜は私を一人にして…」
シルヴィは涙で揺らめく瞳で自分の指をみつめていた。
(そうだわ…考えてみたらこの指輪にお願いしたことは全て叶ってる…
最初にポリーヌを探してってお願いした時から、今までずっと…
これは本当に7つの願いを叶えてくれる指輪だったのね…もっと考えて使えば良かった。
今更、そんなことを考えてももう遅いわね…
……いえ!遅くはないわ!私が今までにお願いしたのは6つ…願い事はあと1つ残ってる!
指輪さん…!!どうか、今までのこと…
指輪を買ってから今日までのこと…父さんが亡くなったことまで、すべてが夢だったことにして…!!
これが私の最後のお願いよ!)
*
「シルヴィ!!」
この数日間、会社に出て来ないシルヴィを心配した同僚がシルヴィの家を訪れ、管理人に鍵をあけてもらって中に入ると、シルヴィはベッドの中ですでに冷たくなっていた。
「シルヴィ…なんてことなの…」
すぐにシルヴィの父親にも連絡が取られた。
『もらうだけなんてだめ…
なにかをもらったら、なにかをあげなきゃ…』
どこかでそんな小さな声がしたことに、気付いた者は誰もいない…
そう言うと、シルヴィの瞳からは大粒の涙が流れ出し、それ以上は言葉にならなかった。
幼い頃に母を亡くし、それから再婚もせずに男手一つでシルヴィを育ててくれた父が…
あの元気だった父が…
愛しい父の笑顔が頭に浮かぶ…
(父さん…なぜこんなことに…
………ま、まさか、私が指輪にあんなことを頼んだせいなの…?!
実家と農場を売れば、エクトルの借金はちょうど払えそうな額が手に入る…
そんな考えが脳裏をかすめたことは確かにあったが、実際にそんなことが出来るはずはない…
「シルヴィ!
それで家にはいつ帰るんだい?
家はすぐに売れそうなのか?」
「エクトル…父さんが死んだのよ…
そんなこと今言わなくても…」
「す、すまない。
だけど、僕も急いでるし…なんなら僕もついていこうか?」
大好きだったエクトルが、急に色褪せて見えた。
「大丈夫よ。私一人で行って来る…
明日の朝、発つわ。
悪いけど隣の部屋で休んで。今夜は私を一人にして…」
シルヴィは涙で揺らめく瞳で自分の指をみつめていた。
(そうだわ…考えてみたらこの指輪にお願いしたことは全て叶ってる…
最初にポリーヌを探してってお願いした時から、今までずっと…
これは本当に7つの願いを叶えてくれる指輪だったのね…もっと考えて使えば良かった。
今更、そんなことを考えてももう遅いわね…
……いえ!遅くはないわ!私が今までにお願いしたのは6つ…願い事はあと1つ残ってる!
指輪さん…!!どうか、今までのこと…
指輪を買ってから今日までのこと…父さんが亡くなったことまで、すべてが夢だったことにして…!!
これが私の最後のお願いよ!)
*
「シルヴィ!!」
この数日間、会社に出て来ないシルヴィを心配した同僚がシルヴィの家を訪れ、管理人に鍵をあけてもらって中に入ると、シルヴィはベッドの中ですでに冷たくなっていた。
「シルヴィ…なんてことなの…」
すぐにシルヴィの父親にも連絡が取られた。
『もらうだけなんてだめ…
なにかをもらったら、なにかをあげなきゃ…』
どこかでそんな小さな声がしたことに、気付いた者は誰もいない…
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