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032. 指輪
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「シルヴィ、早く、早く!」
「待ってよ、ポリーヌ!」
今日は市の日。
この田舎町にも半年に一度市がたつ。
その時だけは、いつもの何倍もの人々がこの町に集まり、普段は静かで寂びれたこの町もにわかに活気付く。
シルヴィと友人のポリーヌは、この市が楽しみで毎回訪れる。
普段はみかけることのない様々なものが立ち並ぶ様は、見ているだけでも心が弾む。
特に裕福ではないシルヴィとポリーヌに手軽に買える安いものもけっこう並んでいる。
そんなものを見てまわりながら、二人は楽しい一時を過ごしていた。
(わぁ!…なんて、綺麗な指輪なのかしら!)
シルヴィの足がある店の前でぴたりと停まった。
見る角度によって様々な色に変わる不思議な石…
宝石等とても手が届くものではないということはわかってはいるが、シルヴィの瞳はその指輪に釘付けになっていた。
「この指輪がお気に召しましたか?」
シルヴィのそんな様子に気付いた店員が声をかけてきた。
「い…いえ…あの…別に私は…」
とてもこんな宝石を買えるわけがないという想いから、シルヴィはしどろもどろな返答をしてしまった。
「この指輪はね…妖精達が虹の欠片を集めて作った…なんて言い伝えがありましてね。
それで、この指輪は7つの願いが叶うとも言われてるんです。
しかも…とてもお買い得なお値段なんですよ!」
店員は声をひそめてそう言うと、指輪の値段を紙切れに書き示した。
「えっ!まさか…!」
それは、シルヴィが漠然と考えていた値段の十分の一にも満たない値段だった。
「本当ですよ。
さ、良かったら、手にとってじっくりと見てください。」
店員に言われるままにシルヴィは指輪を手に取り、指にさしてみた。
(まぁ、ぴったりだわ!
あぁ…なんて綺麗なのかしら…
こんなにキラキラ輝いて…)
「とてもよくお似合だ!
指輪もあなたに出会えてとても喜んでるようですよ。」
「本当ですか…?
ねぇ…ポリーヌ、あなた、どう…」
振り返るとそこにポリーヌの姿はなかった。
「ポリーヌ!ポリーヌ!」
あたりを探しながら、シルヴィは彼女の名を大きな声で呼んでみたが、返事は戻っては来なかった。
(もう…ポリーヌったら、どこに行ったのかしら…)
「待ってよ、ポリーヌ!」
今日は市の日。
この田舎町にも半年に一度市がたつ。
その時だけは、いつもの何倍もの人々がこの町に集まり、普段は静かで寂びれたこの町もにわかに活気付く。
シルヴィと友人のポリーヌは、この市が楽しみで毎回訪れる。
普段はみかけることのない様々なものが立ち並ぶ様は、見ているだけでも心が弾む。
特に裕福ではないシルヴィとポリーヌに手軽に買える安いものもけっこう並んでいる。
そんなものを見てまわりながら、二人は楽しい一時を過ごしていた。
(わぁ!…なんて、綺麗な指輪なのかしら!)
シルヴィの足がある店の前でぴたりと停まった。
見る角度によって様々な色に変わる不思議な石…
宝石等とても手が届くものではないということはわかってはいるが、シルヴィの瞳はその指輪に釘付けになっていた。
「この指輪がお気に召しましたか?」
シルヴィのそんな様子に気付いた店員が声をかけてきた。
「い…いえ…あの…別に私は…」
とてもこんな宝石を買えるわけがないという想いから、シルヴィはしどろもどろな返答をしてしまった。
「この指輪はね…妖精達が虹の欠片を集めて作った…なんて言い伝えがありましてね。
それで、この指輪は7つの願いが叶うとも言われてるんです。
しかも…とてもお買い得なお値段なんですよ!」
店員は声をひそめてそう言うと、指輪の値段を紙切れに書き示した。
「えっ!まさか…!」
それは、シルヴィが漠然と考えていた値段の十分の一にも満たない値段だった。
「本当ですよ。
さ、良かったら、手にとってじっくりと見てください。」
店員に言われるままにシルヴィは指輪を手に取り、指にさしてみた。
(まぁ、ぴったりだわ!
あぁ…なんて綺麗なのかしら…
こんなにキラキラ輝いて…)
「とてもよくお似合だ!
指輪もあなたに出会えてとても喜んでるようですよ。」
「本当ですか…?
ねぇ…ポリーヌ、あなた、どう…」
振り返るとそこにポリーヌの姿はなかった。
「ポリーヌ!ポリーヌ!」
あたりを探しながら、シルヴィは彼女の名を大きな声で呼んでみたが、返事は戻っては来なかった。
(もう…ポリーヌったら、どこに行ったのかしら…)
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