164 / 697
026. 堕ちた聖域
1
しおりを挟む
(…ここが女神の森……)
心地良い風が通り抜け、温かな太陽の光が降り注ぐ…
時折、小鳥達が可愛らしい鳴き声を発しながら飛び交い、どこからか甘い花の香りが風に乗って運ばれて来る。
(女神の森というのにふさわしい場所だな…)
少し前のことだった。
私は旅の途中で、恋の願いを叶えてくれるというこの女神の森のことを知った。
特にあてのある旅ではない。
そんな所があるのなら、少し寄ってみようか…
そんな軽い気持ちだった。
森の一角にはこの場所にはなんとなく不似合いな粗末な木の台座があった。
近くの村の者の話によると、ここには森の女神が住むという。
それは昨年から突然始まった。
ある男が森の近くを通りがかった時に不思議な声を聞いた…
「なにか…食べ物を…」
あたりを見まわしたがそこには誰もいなかった。
男は怖くなり、持っていた自分の弁当をその場に置いて逃げ帰った。
それから数日後、男はひょんなことから隣村のとても美しい娘と知り合い、あっという間に2人は恋に落ち結婚した。
「これは、神のお導きに違いない…!」
男の話は狭い村の中にあっという間に広がった。
男の真似をして、森の中に食べ物を置いていく者が現れた。
すると、その男もまたすぐに素敵な女性と巡り合うことが出来た。
「間違いない!
あの森には女神様が住まわれているんだ!」
恋の願いを叶えてくれる森の女神の噂は、瞬くうちに広がって行った。
森は神聖な場所となり、いつの間にか誰が決めたのかわからない決め事が出来あがっていた。
祈りを捧げる時以外には決して足を踏み入れてはいけない。
貢物を欠かさないようにする。
暗くなってからは入ってはいけない。
村人達はこの決め事をしっかりと守っていた。
私は、台座の前に持ってきた果物を供え、両手を組んで祈りを捧げた。
(……森の女神よ…
どうか、私を理想の女性とめぐり会わせて下さい…)
心地良い風が通り抜け、温かな太陽の光が降り注ぐ…
時折、小鳥達が可愛らしい鳴き声を発しながら飛び交い、どこからか甘い花の香りが風に乗って運ばれて来る。
(女神の森というのにふさわしい場所だな…)
少し前のことだった。
私は旅の途中で、恋の願いを叶えてくれるというこの女神の森のことを知った。
特にあてのある旅ではない。
そんな所があるのなら、少し寄ってみようか…
そんな軽い気持ちだった。
森の一角にはこの場所にはなんとなく不似合いな粗末な木の台座があった。
近くの村の者の話によると、ここには森の女神が住むという。
それは昨年から突然始まった。
ある男が森の近くを通りがかった時に不思議な声を聞いた…
「なにか…食べ物を…」
あたりを見まわしたがそこには誰もいなかった。
男は怖くなり、持っていた自分の弁当をその場に置いて逃げ帰った。
それから数日後、男はひょんなことから隣村のとても美しい娘と知り合い、あっという間に2人は恋に落ち結婚した。
「これは、神のお導きに違いない…!」
男の話は狭い村の中にあっという間に広がった。
男の真似をして、森の中に食べ物を置いていく者が現れた。
すると、その男もまたすぐに素敵な女性と巡り合うことが出来た。
「間違いない!
あの森には女神様が住まわれているんだ!」
恋の願いを叶えてくれる森の女神の噂は、瞬くうちに広がって行った。
森は神聖な場所となり、いつの間にか誰が決めたのかわからない決め事が出来あがっていた。
祈りを捧げる時以外には決して足を踏み入れてはいけない。
貢物を欠かさないようにする。
暗くなってからは入ってはいけない。
村人達はこの決め事をしっかりと守っていた。
私は、台座の前に持ってきた果物を供え、両手を組んで祈りを捧げた。
(……森の女神よ…
どうか、私を理想の女性とめぐり会わせて下さい…)
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ファントーシュ 私は魔法が使えない
かける
ファンタジー
アカネ・シズクノは小さいころから魔法が使えなかった。
自分はいつか魔女になるんだ。そう願わぬ願いを毎日信じていた。
ある日、アカネは師匠となる魔女と出会った。
アカネは魔女についていき、弟子となった。
物語はそうしたアカネが成長し、魔法使いとなったお話。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

婚約破棄を告げた瞬間に主神を祀る大聖堂が倒壊しました〜神様はお怒りのようです〜
和歌
ファンタジー
「アリシア・フィルハーリス、君の犯した罪はあまりに醜い。今日この場をもって私レオン・ウル・ゴルドとアリシア・フィルハーリスの婚約破棄を宣言する──」
王宮の夜会で王太子が声高に告げた直後に、凄まじい地響きと揺れが広間を襲った。
※恋愛要素が薄すぎる気がするので、恋愛→ファンタジーにカテゴリを変更しました(11/27)
※感想コメントありがとうございます。ネタバレせずに返信するのが難しい為、返信しておりませんが、色々予想しながら読んでいただけるのを励みにしております。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
いずれ最強の錬金術師?
小狐丸
ファンタジー
テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。
女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。
けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。
はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。
**************
本編終了しました。
只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。
お暇でしたらどうぞ。
書籍版一巻〜七巻発売中です。
コミック版一巻〜二巻発売中です。
よろしくお願いします。
**************
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる