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022. 日常風景
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「咲也、お兄さんにも…」
そう言いながら振り返ると、そこにはもうあの人はいなかった…
「兄貴がどうかした?」
「……なんでもない」
もしかしたら、あの人はこの世の人ではないのかもしれない。
その方が良い。
それなら、辛い想いをしなくても済みそうだから。
こんなに苦しいと思わなかった。
こんなに愛してるとは思わなかった。
私…ちょっと、おかしいかもしれない…
そのくらいあの人のことが好きだったことについさっき気付いてしまって、そして、急にものすごく苦しくなっていた。
「水青、どうした?」
「……ん、もしかしたら、風邪ひいたのかも…」
「大丈夫か?」
「……ん、大丈夫。」
「あ、さっき、兄貴見ただろ?」
「うん、見た。」
とてもそっけない態度で答えた。
私、女優の才能があるのかもしれない。
「なにかしゃべった?」
「……ううん、ちょうど咲也が帰って来たから。」
「そっか。
兄貴、あんまりしゃべらないし愛想悪いけど、気にすんなよ。
いつもあんななんだ。
もともと暗いんだよ。」
「そうなの…私、何も気にしてないから。」
「でも、あれでけっこうモテるんだよ。
昔からチョコの数はいっつも俺より多い。
おかしいと思わないか?」
「まぁ、人の好みはいろいろだし…
お兄さんもきっと良いとこあるんだよ。
お兄さん、彼女は?」
「いないみたいだな。
でも、きっと、もうじき出来る。」
「もうじき出来るって…なんで?
もしかして、咲也の予言?」
また女優の才能を発揮した。
本当はどきどきしてるのを必死で堪えてふざけてみせた。
「そうじゃなくてさ…
ものすっごく積極的な女がいるんだよ。
その子がもう何ヶ月か前から、兄貴に猛アタックしててさ。」
「お兄さんがその子とつきあうと思ってんの?
そんな押しの強い子、きっとお兄さんは苦手なんじゃないかな?」
「そんなことないさ。
兄貴みたいに消極的な男は、ああいう押しの強い女には意外とあっさりやられるんだよ。
もうじきバレンタインだしさ、きっと、あの子、本気で頑張ってくると思うしさ。」
「そうなんだ~…」
気のない返事をしながら、私の頭の中はその女のことでいっぱいになっていた。
なんていやな女なんだろう…!
そんな奴、死んじゃえ!
あの人はあんたになんて絶対になびかない!
どんな女なのかもまるで知らない相手のことを、私はただ猛烈に憎んでいた。
そう言いながら振り返ると、そこにはもうあの人はいなかった…
「兄貴がどうかした?」
「……なんでもない」
もしかしたら、あの人はこの世の人ではないのかもしれない。
その方が良い。
それなら、辛い想いをしなくても済みそうだから。
こんなに苦しいと思わなかった。
こんなに愛してるとは思わなかった。
私…ちょっと、おかしいかもしれない…
そのくらいあの人のことが好きだったことについさっき気付いてしまって、そして、急にものすごく苦しくなっていた。
「水青、どうした?」
「……ん、もしかしたら、風邪ひいたのかも…」
「大丈夫か?」
「……ん、大丈夫。」
「あ、さっき、兄貴見ただろ?」
「うん、見た。」
とてもそっけない態度で答えた。
私、女優の才能があるのかもしれない。
「なにかしゃべった?」
「……ううん、ちょうど咲也が帰って来たから。」
「そっか。
兄貴、あんまりしゃべらないし愛想悪いけど、気にすんなよ。
いつもあんななんだ。
もともと暗いんだよ。」
「そうなの…私、何も気にしてないから。」
「でも、あれでけっこうモテるんだよ。
昔からチョコの数はいっつも俺より多い。
おかしいと思わないか?」
「まぁ、人の好みはいろいろだし…
お兄さんもきっと良いとこあるんだよ。
お兄さん、彼女は?」
「いないみたいだな。
でも、きっと、もうじき出来る。」
「もうじき出来るって…なんで?
もしかして、咲也の予言?」
また女優の才能を発揮した。
本当はどきどきしてるのを必死で堪えてふざけてみせた。
「そうじゃなくてさ…
ものすっごく積極的な女がいるんだよ。
その子がもう何ヶ月か前から、兄貴に猛アタックしててさ。」
「お兄さんがその子とつきあうと思ってんの?
そんな押しの強い子、きっとお兄さんは苦手なんじゃないかな?」
「そんなことないさ。
兄貴みたいに消極的な男は、ああいう押しの強い女には意外とあっさりやられるんだよ。
もうじきバレンタインだしさ、きっと、あの子、本気で頑張ってくると思うしさ。」
「そうなんだ~…」
気のない返事をしながら、私の頭の中はその女のことでいっぱいになっていた。
なんていやな女なんだろう…!
そんな奴、死んじゃえ!
あの人はあんたになんて絶対になびかない!
どんな女なのかもまるで知らない相手のことを、私はただ猛烈に憎んでいた。
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