133 / 697
021. 奇跡
5
しおりを挟む
(あいつの隠れ場所を探すなんて簡単なことだ…)
あれから10分…
世夜は、羊が駆け出して行った方向へ向かった。
先ほどの羊の走り具合を思い出しながら、世夜は羊と同じような速度で走る。
走っていると、いつの間にかショッピングセンターのはずれまで来ていた。
世夜は、腕時計の文字盤に目を落とす。
(ここまでで5分か…
なら、奴が隠れた場所はあそこだ!)
世夜は、近くに見える倉庫に目星を付けた。
(奴はあそこのどこかに隠れているに違いない。
暑いのにご苦労なことだな…
しかし、なんでこの俺がかくれんぼなんて子供の遊びをせにゃならんのだ…)
倉庫に向かう途中で、世夜は不意に足を止めた。
このまま奴を暑い所で我慢させておくのも面白い…とも考えたのだが、逆に「やっぱり世夜にはみつけられなかったのねん!俺の勝ちなのねん!」と偉そうにされるのもいまいましい。
「さっさと終わらせるか…」
世夜は、そのまま倉庫へ向かった。
*
「メリー…なんだ、また来たのか?」
「今日も誰も来ないのん?」
「あぁ、来ないよ。
前にも言った通り、外からの人間なんてめったに来るもんじゃないんだ。
メリー、まさか、まだ外の世界のことが諦めきれないんじゃないだろうな?」
「そうじゃないのねん。
俺もジェリコさんみたいなガイドになろうと思って…」
「……なら良いけど…
外のことが忘れられない奴はここでは生きていけないからな。
早く忘れなきゃだめだぞ!」
「わかってるのん…」
「じゃ、俺は帰るからな。
メリーも早く帰って来いよ!」
「は~い!」
(俺ももう諦めてるのねん…
ここから帰った人が一人もいないことも知ってるのねん。
でも…それでも、やっぱりここに来てしまうのねん。
こんなことなら、皆にもっと優しくしとけばよかったのん。
世夜、俺のことまだ探してたらどうしよう…)
その時、門の中央の空気がゆらめき、何かが開いた感じと共に世夜がひょっこりと顔を出した。
「みつけた!」
「よ、よ、世夜!!」
羊は、信じられない想いで揺らめきの中に走りこむ!
あれから10分…
世夜は、羊が駆け出して行った方向へ向かった。
先ほどの羊の走り具合を思い出しながら、世夜は羊と同じような速度で走る。
走っていると、いつの間にかショッピングセンターのはずれまで来ていた。
世夜は、腕時計の文字盤に目を落とす。
(ここまでで5分か…
なら、奴が隠れた場所はあそこだ!)
世夜は、近くに見える倉庫に目星を付けた。
(奴はあそこのどこかに隠れているに違いない。
暑いのにご苦労なことだな…
しかし、なんでこの俺がかくれんぼなんて子供の遊びをせにゃならんのだ…)
倉庫に向かう途中で、世夜は不意に足を止めた。
このまま奴を暑い所で我慢させておくのも面白い…とも考えたのだが、逆に「やっぱり世夜にはみつけられなかったのねん!俺の勝ちなのねん!」と偉そうにされるのもいまいましい。
「さっさと終わらせるか…」
世夜は、そのまま倉庫へ向かった。
*
「メリー…なんだ、また来たのか?」
「今日も誰も来ないのん?」
「あぁ、来ないよ。
前にも言った通り、外からの人間なんてめったに来るもんじゃないんだ。
メリー、まさか、まだ外の世界のことが諦めきれないんじゃないだろうな?」
「そうじゃないのねん。
俺もジェリコさんみたいなガイドになろうと思って…」
「……なら良いけど…
外のことが忘れられない奴はここでは生きていけないからな。
早く忘れなきゃだめだぞ!」
「わかってるのん…」
「じゃ、俺は帰るからな。
メリーも早く帰って来いよ!」
「は~い!」
(俺ももう諦めてるのねん…
ここから帰った人が一人もいないことも知ってるのねん。
でも…それでも、やっぱりここに来てしまうのねん。
こんなことなら、皆にもっと優しくしとけばよかったのん。
世夜、俺のことまだ探してたらどうしよう…)
その時、門の中央の空気がゆらめき、何かが開いた感じと共に世夜がひょっこりと顔を出した。
「みつけた!」
「よ、よ、世夜!!」
羊は、信じられない想いで揺らめきの中に走りこむ!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

悪役貴族に転生した俺が鬱展開なシナリオをぶっ壊したら、ヒロインたちの様子がおかしいです
木嶋隆太
ファンタジー
事故で命を落とした俺は、異世界の女神様に転生を提案される。選んだ転生先は、俺がやりこんでいたゲームの世界……と思っていたのだが、神様の手違いで、同会社の別ゲー世界に転生させられてしまった! そのゲームは登場人物たちが可哀想なくらいに死にまくるゲームだった。イベボス? 負けイベ? 知るかそんなもん。原作ストーリーを破壊していく。あれ? 助けたヒロインたちの目のハイライトが……?
※毎日07:01投稿予定!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

お気楽、極楽⁉︎ ポンコツ女神に巻き込まれた俺は、お詫びスキルで異世界を食べ歩く!
にのまえ
ファンタジー
目が覚めたら、女性が土下座をしていた。
その女性に話を聞くと、自分を女神だと言った。そしてこの女神のミス(くしゃみ)で、俺、鈴村凛太郎(27)は勇者召喚に巻き込まれたらしい。
俺は女神のミスで巻き込まれで、勇者ではないとして勇者特有のスキルを持たないし、元の世界には帰れないようだ。
「……すみません」
巻き込みのお詫びとして、女神は異世界で生きていくためのスキルと、自分で選んだスキルをくれた。
これは趣味の食べ歩きを、異世界でするしかない、
俺、凛太郎の異世界での生活が始まった。
幸福サーカス団
もちもちピノ
ホラー
幸福サーカス団
なんでも願いを叶えてくれるサーカス団のお話
幸福サーカス団とは
全ての人に幸せを提供するサーカス団
でも幸せにはルールがあるんだ
なんでもいいと言ってはダメ
願いを叶えたお客様は決して団員を傷つけてはいけない。
そして願いがどの方向に行ってもサーカス団に責任はない
そんなサーカス団とお客様と不思議な事件のお話

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる