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ルカ(聖夜月ルカ)

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020. 冥王

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「なんだと、この野郎!」

「ディック、やめろよ。
そんな奴に構うな!」

「ははっ、腰抜けの友達はやっぱり腰抜けなんだな。」

「何をーーー!」

「やめろ、ディック!」

それは酒場でよくある些細な喧嘩だった。
お互いが酔っているため、男達はくだらないことですぐにかっとなり、大喧嘩をした挙句、次の日にはお互いがそのことを忘れている…

しかし、今回の喧嘩は少し違っていた。
ディックは倒れた拍子に、固い暖炉の角で頭を強打した。
血綿が噴き出し、素人目にも、ディックが大変危険な状態だということだわかった。







「冥王様、無事に任務は完了しました。
今回はローデス様がしっかりと確認して下さいましたから、ご安心下さい。
リチャード・J・スミスは間違いなく先程冥界に送りこんで参りました。」

「ご苦労だった…
それで、ロインクレーのリチャード・J・スミスの魂は…?」

「はい、それも間違いなく…」

「そうか…」

冥王はどこか遠くをみつめ、ゆっくりと頷いた。








「冥王様、ローデスでございます。」

しばらくして、冥王の部屋にノックする音が響いた。



「ローデスか、入れ。」

入室を許されたローデスは、冥王の前で恭しく頭を下げ、書類を手にした。



「冥王様、先程、ロイングレーのリチャード・J・スミス、27歳が…」

「そのことなら、死神に聞いた。
今度は間違いないんだな?」

「はい。間違いありません。」

「どのような男だ?」

「なにやら威勢の良い男でして…おまえはもう死んだのだと伝えると大暴れしまして、そりゃあもう大変な騒ぎでした。
それはそうと、冥王様、先程、ロインクレーの方のリチャード・J・スミスの関係者を調べていたのですが…この者の…」

ローデスは書類の一部を指差した。



「何か文句でもあるのか…」

「え……ですが、冥王様…こういうことは…ですねぇ…」

「ローデス……おまえは私のやることに何か文句があるのかと聞いておるのだ。」

威嚇するような低い声とローデスを射抜くようなその視線は、それ以上ローデスに異義を挟ませないものだった。



「……いえ、そのようなことは何も。
失礼致しました!」

ローデスは、頭を下げると逃げるように部屋を出た。
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