Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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018. 変身

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「な、なんだ、これは…」

シエルの屋敷がある筈の場所は、薄汚い小屋の立ち並ぶスラム街だった。



「おや、疫病神のクラウスじゃないか。
なんだい、その顔じゃまた屋敷をクビになったのかい。
良い気味だ!」

水を汲みに来たと思われる中年の女性は、クラウスに冷たい視線を投げかけ、そそくさと彼の前から姿を消した。



(どういうことだ…
確か、ここにはシエルの屋敷があったはずなのに…)

ふと落とした視線が、若い女性のそれとぶつかった。
その瞬間、女性は血相を変えて街の奥へ駆け出した。



「待ってくれ!なぜ、逃げる!?」

クラウスは女性の後を追う…
息を切らした女性がクラウスに捕まったのは、それから数分後のことだった。



「ゆ、許しておくれ!
打たないでおくれ!
金なら今夜稼いで来るから…もう絶対にあんたから逃げたりしないから!」

女性は見を縮め、ガタガタと震えながら涙を浮かべてクラウスに懇願する。



(……私は一体どういう人間だったのだ?)

女性の異常なまでの怯えようと、その言葉からだいたいのことはクラウスにも想像が付いた。
この世界での自分に対し、小さな溜息をひとつ…



「私はなにもしない…
ただ、聞きたいことがあるだけだ。
シエルという男…」

「あんた!本当にやるつもりなのかい!
やめておきなよ!
シエルはこの国の王子なんだよ!」

女性はまだ話途中のクラウスの言葉を遮り、クラウスに詰め寄った。



「シエルが…この国の王子…?」

女性の言葉に、クラウスは脳天を打ちつけられた想いだった。



(城に行けば、こんなことになった手掛かりのようなものがみつかるかもしれぬ…)



シエルなら、今の状況を話せば協力してくれるかもしれない。
ルウザとは違い、シエルはとても冷静な男だ。

クラウスは女性から粗末なパンをもらうと、それを頬張った。
今まで口にしたことのないほどの酷い味だったが、そんなことはまるで気にならなかった。



「クラウス!」

腹ごしらえを終えたクラウスは、女性の呼び声を無視して城へ向かって歩き始めた。
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