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ルカ(聖夜月ルカ)

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012. 若き支配者

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「ねぇ、おじさん、王様って何でも好きなことが出来るんだよね?」

 「何も好きなことが出来る…というわけではないが…」

 「僕、王様なんだから法律を作りたい!」

 「法律?そんなことは議会で決めなければ…」

 「法律が作れないなら僕やめる!王様なんて、今すぐやめる!」

 「わ、わかった!」



ここで王をやめられては困る。
 我が儘なトーマスをたしなめることも出来ず、ハマーは唇を噛み締めた。



 「えーっと、みんな、ごはんの代わりにお菓子を食べること!」

 「子供は勉強をせず、毎日あそぶこと!」

 「一日、一枚、絵を描くこと。」



トーマスの考えたおかしな法律がどんどん発布され、ハマーも国民も皆戸惑うばかりだった。
ただ、子供たちだけは、トーマスの法律に喜んでいた。



やがて、混乱のうちに一か月が過ぎた。



 「おぉぉ……」



 真っ暗な雲が空を覆い、激しい雨が降り出した。



 「ハマー様、解けました!
 魔女の呪いが解けたのです!」

 「ありがとう、アリオラ!
そして、トーマス…本当にありがとう!」

ハマーはトーマスの小さな体を抱き締めた。



 「アリオラ、トーマスを元の世界に戻してやってくれ。」

 「えっ?僕、ここが良いよ。
 王様のお仕事、けっこう面白いし…」

 「いやいや、おまえは戻らねばならぬ。」

 帰るのを渋るトーマスを、無理に魔方陣に座らせ、アリオラは呪文を唱えた。



 「うわぁ!」

やがて、魔方陣は目も眩む程の光を放ち…
次の瞬間、トーマスの姿は消えていた。
それを見て、ハマーはほっと胸を撫でおろした。



 (本当にありがとう、幼き王よ……)



トーマスにはずいぶんと困らせられたのに、いなくなると何となく寂しさを感じることに、ハマーは思わず苦笑した。
ひと月だけの王だったトーマスの名は、国民たちにとっていつまでも忘れられない名前となった。

 
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