Gift

012. 若き支配者

２

＊



 「いやだいやだ！
 僕、こんなとこにいるのいやだ！
 家に帰る！王様になんかなりたくない！」

 「誰か、トーマスをなんとかなだめよ！」

 手足をばたつかせながら、泣き叫ぶトーマスに、侍女たちは右往左往しながら走り回る。



 「トーマス様、お菓子をどうぞ。」

 「トーマス様、ご本はいかがですか？」

 「トーマス様、甘い葡萄のジュースを召し上がれ。」



しかし、何を言ってもトーマスはおさまらない。
やがて、トーマスは泣き疲れて眠ってしまった。



 「アリオラ…あのような者に王が務まるとは思えぬ。
あやつは、まだ６歳だというではないか。
そんな子供に国が治められるはずがない。」

 「形だけで構わぬのです。
これは、呪いを解く儀式のようなものですから。
とにかく、トーマスを一か月の間、この国の王にすれば、呪いは解けるのですから…」

 「……本当にそれで解けるのだな？」

 「はい、間違いありません。」



そこまで言われては、ハマーも納得するしかなかった。
どうか、この一か月が無事に過ぎ去ってくれるようにと、ハマーは心の中で神に祈った。