Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
47 / 697
008. さらなる力

しおりを挟む
「畜生!僕のせいでメルは…」

アーロンは、涙を流しながら、テーブルを叩きつけた。



 「アーロン…あなたのせいじゃないわ。
その人は…」

 「君は何もわかっちゃいない!
メルは、僕をかばって死んだんだぞ!」



 憤慨して、赤い目でフィリスを睨みつけるアーロンに、フィリスは何も言えなかった。



アーロンはこの国の騎士だ。
 三か月ほど前から、近隣の国との戦争が始まり、当然、アーロンも戦闘に参加していた。
 今日は同じ騎士団の親友・メルが、アーロンをかばって命を落とし、そのことでアーロンは酷く傷付いていた。



 「あぁ…力が欲しい!強力な力が…
僕にもっと力があればメルはこんなことにはならなかったし、メルの敵討ちのために敵国の奴らをもっとめちゃくちゃに倒してやれるのに…」

 「あなたは、昔から一生懸命、剣術の稽古に励んでいるじゃない。
あなたは、決して弱くはないわ。」

 「今のままじゃだめなんだ!
 僕は、人並みはずれた力がほしい!
 鬼神と言われるほどの並外れた力が…!
いくら稽古を積んだところで、そんな力は身につかない。
 何か方法はないのか、何か……
 ……そうだ!」

アーロンの顔に、不意に笑みが浮かんだ。



 「どうしたの?アーロン…」

 「フィリス…君は聞いたことがないか?
 悪魔と契約を交わせば、その代わりに特別な力を得られるって話を…」

 「ば、馬鹿なことを言わないで!
そんなことをしたら、死んでからあなたの魂は地獄に堕ちることになるのよ。
それに、特別な力なんて持ってしまったら、魔女狩りに遭うかもしれないわ。
どちらにしても、そんなこと、絶対に考えちゃ駄目よ!」

 「死んでから地獄に行こうが天国に行こうが、そんなことはどうでも良いことだ。
 大切なのは今だ!
それに、魔力を人前で使わなければ、バレることもない。
 僕はそんなへまはしないから大丈夫だ。」

 「だめだったら、だめよ!」



その晩、二人はわかりあうことは出来ず、気まずい雰囲気のままで別れた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【完結】魔獣の公女様 

nao
ファンタジー
「どうして?ナディア」 さっきまで、同じベッドで眠っていた妹の事を思う。 イースデール公国 公女のリディア=イースデールは、1ヶ月後 マルコシアス帝国の王太子アラン=マルコシアスに嫁ぐ予定だった。 妹に魔獣に変えられてしまった公女様の物語です。 ノロノロ更新になりそうですが、よろしくお願いします。 ファンタジー小説大賞にエントリーさせていただきました。 たくさんの人に読んでもらえると嬉しいです。

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ【ユニークキャラクター賞】受賞作 《あらすじ》 この世界では12歳になると、自分に合ったジョブが決まる。これは神からのギフトとされこの時に人生が決まる。 皆、華やかなジョブを希望するが何に成るかは神次第なのだ。 そんな中俺はジョブを決める12歳の洗礼式で【魔物使い】テイマーになった。 花形のジョブではないが動物は好きだし俺は魔物使いと言うジョブを気にいっていた。 ジョブが決まれば12歳から修行にでる。15歳になるとこのジョブでお金を稼ぐ事もできるし。冒険者登録をして世界を旅しながらお金を稼ぐ事もできる。 この時俺はまだ見ぬ未来に期待していた。 だが俺は……一年たっても二年たっても一匹もテイム出来なかった。 犬や猫、底辺魔物のスライムやゴブリンでさえテイム出来ない。 俺のジョブは本当に魔物使いなのか疑うほどに。 こんな俺でも同郷のデュークが冒険者パーティー【深緑の牙】に仲間に入れてくれた。 俺はメンバーの為に必死に頑張った。 なのに……あんな形で俺を追放なんて‼︎ そんな無能な俺が後に…… SSSランクのフェンリルをテイム(使役)し無双する 主人公ティーゴの活躍とは裏腹に 深緑の牙はどんどん転落して行く…… 基本ほのぼのです。可愛いもふもふフェンリルを愛でます。 たまに人の為にもふもふ無双します。 ざまぁ後は可愛いもふもふ達とのんびり旅をして行きます。 もふもふ仲間はどんどん増えて行きます。可愛いもふもふ仲間達をティーゴはドンドン無自覚にタラシこんでいきます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

処理中です...