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006. 喧嘩
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「もしも、お爺さんの腰が治ったらまたやるけど、もしかしたら今日で最後になるかもしれないよ。」
「えっ!そんなこと言わないでほしいのねん。
こんなに美味しいのが食べられなくなったら悲しいのん。」
「ありがとうよ。
もし良かったら、半年くらいしてからまた来てみておくれ。」
老女にそう言われ、しばらくはその店のことが気にかかっていたメリーも、いつの間にか忘れ去っていた。
(思い出して良かったのねん。)
店の奥にあるのは14インチの小さなテレビ。
2011年からはきっと映らなくなるんだろうな等と考えながら、メリーはぼんやりとその小さな画面をみつめていた。
『バッキャローーーー!!』
学生服の少年が、目に涙を貯めながら同級生らしき同じ年頃の少年の頬を殴った。
『な、何をしやがるんだ!』
『殴ってやる!
おまえみたいな意気地なし、俺は何度でもおまえを殴ってやる!』
『畜生~~!!』
今度は殴られていた方の少年が、相手の少年に向かって重いパンチを繰り出した。
少年達の後ろでは、大きな夕陽が青い海をオレンジ色に染め上げている。
少年達は息を切らしながら殴りあい、そして、砂浜に同時にバッタリと倒れこむ。
ハァハァと大きく息をする二人は、やがてお互いの顔をみつめあい、抱きついた。
『ありがとう…哲也…
おまえのパンチ、胸に染みたよ…』
『おまえこそ、やるじゃないか…
彰…俺こそ、おまえのことわかってなかった…
どこかにほんの少しおまえを疑う気持ちがあったんだ…ごめんよ!』
『そのことならもう良いよ。』
『良くないっ!
そうだ、彰!俺を殴ってくれ!』
『ばーか、今までさんざん殴ったじゃないか…』
『あ…』
二人は、大きな声を上げて笑う。
『……ほら、見ろ。
心配する事なんかなかっただろ?』
『そうだね。
奴らは喧嘩して今まで以上に分かり合えたんだね。』
物陰から二人の少年をそっとみつめる中年の男女がそんな会話を交わして微笑む。
(喧嘩したら…仲良くなるのん?)
メリーは、不思議そうな顔をしながら小さなテレビ画面をみつめていた。
「えっ!そんなこと言わないでほしいのねん。
こんなに美味しいのが食べられなくなったら悲しいのん。」
「ありがとうよ。
もし良かったら、半年くらいしてからまた来てみておくれ。」
老女にそう言われ、しばらくはその店のことが気にかかっていたメリーも、いつの間にか忘れ去っていた。
(思い出して良かったのねん。)
店の奥にあるのは14インチの小さなテレビ。
2011年からはきっと映らなくなるんだろうな等と考えながら、メリーはぼんやりとその小さな画面をみつめていた。
『バッキャローーーー!!』
学生服の少年が、目に涙を貯めながら同級生らしき同じ年頃の少年の頬を殴った。
『な、何をしやがるんだ!』
『殴ってやる!
おまえみたいな意気地なし、俺は何度でもおまえを殴ってやる!』
『畜生~~!!』
今度は殴られていた方の少年が、相手の少年に向かって重いパンチを繰り出した。
少年達の後ろでは、大きな夕陽が青い海をオレンジ色に染め上げている。
少年達は息を切らしながら殴りあい、そして、砂浜に同時にバッタリと倒れこむ。
ハァハァと大きく息をする二人は、やがてお互いの顔をみつめあい、抱きついた。
『ありがとう…哲也…
おまえのパンチ、胸に染みたよ…』
『おまえこそ、やるじゃないか…
彰…俺こそ、おまえのことわかってなかった…
どこかにほんの少しおまえを疑う気持ちがあったんだ…ごめんよ!』
『そのことならもう良いよ。』
『良くないっ!
そうだ、彰!俺を殴ってくれ!』
『ばーか、今までさんざん殴ったじゃないか…』
『あ…』
二人は、大きな声を上げて笑う。
『……ほら、見ろ。
心配する事なんかなかっただろ?』
『そうだね。
奴らは喧嘩して今まで以上に分かり合えたんだね。』
物陰から二人の少年をそっとみつめる中年の男女がそんな会話を交わして微笑む。
(喧嘩したら…仲良くなるのん?)
メリーは、不思議そうな顔をしながら小さなテレビ画面をみつめていた。
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