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ルカ(聖夜月ルカ)

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005. 交易都市

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結局、夜中近くまでかかってほとんど全員と思える占い師や行き交う人々に話を聞いて回ったが、「糸たぐり屋」のことを知ってるものはおろか手掛かりさえもつかめなかった。



途方に暮れた私は、通りの片隅にどっかりと腰を降ろし、噂話のことをもう一度思い出していた。
町を間違えたのではないかとも思ったが、そんなことはないはずだ。
この地方にある大きな交易都市というのはここだけなのだから、間違えようがない。
多少、酒を飲んでいたとはいえ、記憶をなくすほどではない。
元々、私は酒に強い方ではないから、酔うほどには飲まないのだから。
その証拠に、噂話をしていた男達の顔も今でもはっきりと覚えている。



その顔を頭に思い浮かべた時、私はあることに気が付いた。



そうだ……!
あの男達は、年の頃は60歳前後…
…と、いうことは、あの話はずいぶんと昔のことなのではないか!?
そう、つまりは昔話だということだ…!
酒を酌み交わしながら、あの男達は昔話に花を咲かせていたのだ…!

それを私は、最近のことだと思いこんでしまった…

なんてことだ…

だから、みつからなかったんだとわかると全身の力が抜けてきた。



私は、重い足取りで通り近くの安い宿を取り、そのまま泥のように眠った。
思ったよりも疲れていたようだ。
気落ちしてしまったせいなのかもしれない…

次の朝、目が覚めたのはもうずいぶんと陽が高く上った時刻だった。
よく眠ったはずなのに、その日の目覚めはあまり良い気分ではなかった。
それも落胆した気持ちのせいなのか?



次の目的地は決まってはいなかったが、とにかくこんな騒がしい町は早くに離れたかった。
「糸たぐり屋」がみつからないとわかった今、こんな所にいても仕方がない。
昨日の店で少し腹ごしらえをしてから、私は町を離れることにした。

昨日の店に行くと、またあの年配の客がいた。
昨日と同じ席で、昨日と同じようにコーヒーを飲みながら新聞に目を通している。



「あ、お客さん。
どうでしたか?
『糸たぐり屋』のことはなにかわかりましたか?」

「いや…それが…」
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