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ルカ(聖夜月ルカ)

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005. 交易都市

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私は、カウンターに腰掛け、温かい紅茶を頼んだ。
とても静かなその店では、自分が紅茶を飲む時の喉の音までが店内に響いてしまう。
そして、もう一人の客が新聞をめくる音…

静か過ぎるというのもあまり居心地の良くないものだ。

こんな場所では当然ながら話し声もまわりに筒抜けだ。
店のマスターに「糸たぐり屋」の話を聞きたいと思いつつも、もう一人の客のことが気になり声をかけあぐねていると、そのうち、その客が店を出て行った。
これ幸いに、私はマスターに声をかけ、「糸たぐり屋」のことを聞いてみたのだが、そんなものはまるで聞いたことはないということだった。



「この町には、あちらこちらから珍しいものがいっぱい入って来るからね。
その全部を知ることなんてとても出来やしない。
でも…そうだ!
夜になると大通りにいろんな占い師が出てくるから、その『糸たぐり屋」もその中にいるかもしれないよ。探してみてはどうだい?
……だけど、あんたみたいな人がなんだってそんなものに興味を持つんだい?
あんたほどの男なら、女には自由はしないだろうに…」

「そんなことはないですよ。
では、夜に探してみることにします。
どうもありがとうございました。」

私はマスターに礼を述べ、店を後にした。



暗くなるまではまだ少し時間がある。
町をぶらつくにも、さっきのあの状態を思い出すととてもじゃないが戻る気がしなかった。
裏通りを抜け、さらにしばらく歩いていくと住宅街に出た。

見るものは特にこれといって何もないが、静かなだけマシだ。
そのうち出くわした小さな公園のベンチに座り、私はそこで暗くなるのを待った。



太陽がやっと傾きかけた頃、私は立ちあがり大通りへの道を戻った。

昼間の喧騒がまるで嘘のように人影はまばらになり、店の片付けをする者や小さな台を持って商売の準備をする占い師がちらほら現れ始めていた。
私は早速その者達に、片っ端から「糸たぐり屋」の話を尋ねてみたが、誰もそんな話は聞いたことがないと言うばかりだった。



こんなことなら、あの酒場で噂話をしていた者にもっと詳しい話を聞いてくれば良かった…
しかし、今更そんなことを考えた所でどうにもなりはしない。


 
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