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003. 天界
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*
「大天使様、なぜ、あのような悪人を天界へ連れて来なくてはならないのですか?
あのような者は、地獄へ行くべきなのでは?」
仕事にもだいぶ慣れて来たある時、シュミットは大天使に訊ねた。
「確かに、そう見えるかもしれぬな。
だが、そのリストに載っている者達は、悪しき心と同時に清らかな心も持ち合わせた者ばかりなのだ。
天界にて最後の審判をし、そこで僅かでも清らかな心の方が多ければ天界に残り、そうでない者は地獄に堕ちる。
その審判のため、ここに連れて来るのだ。」
「なるほど、そういうことだったんですね。」
シュミットは納得し、また魂を迎えに地上へ戻った。
*
(今日は、もうリストに載ってる人がいないわ。)
いつもは朝から晩まで魂を迎えに行くシュミットだったが、その日は珍しく夕方前に終わってしまった。
シュミットは、これといってすることもなく、天界の周りをふらふらと漂っていた。
初めての自由な時間に、シュミットは解放的な気分を感じて飛び回り、気が付けば、今まで行ったことのない辺境の場所へ辿り着いていた。
すると、ある一角になにかとても邪な気を感じ、シュミットは不思議に思い、その場所を目指した。
(あ、あれは…!!)
すでに天界に馴染んだシュミットには、そこにいる者が、悪しき者たちだということに気付いた。
本来ならば、地獄にいるはずの悪しき者たちが、天界の近くに集結していたのだ。
(な、なぜ、あのような者たちがこんなところに…!?)
「何者だ!?」
不意にひとりの悪しき者がシュミットの方を振り向き、大きな声を上げた。
シュミットは、反射的にその場から逃げ出した。
「あいつを捕まえろ!」
十数名の魔物たちが、シュミットを追いかけて来る。
シュミットは、必死になって逃げる。
だが、魔物たちの速度は思いの外速く、このままではもうすぐに追いつかれてしまう。
シュミットは、迫り来る恐怖に涙を流し、無意識に叫んだ。
「おじいちゃん!助けて!!」
「大天使様、なぜ、あのような悪人を天界へ連れて来なくてはならないのですか?
あのような者は、地獄へ行くべきなのでは?」
仕事にもだいぶ慣れて来たある時、シュミットは大天使に訊ねた。
「確かに、そう見えるかもしれぬな。
だが、そのリストに載っている者達は、悪しき心と同時に清らかな心も持ち合わせた者ばかりなのだ。
天界にて最後の審判をし、そこで僅かでも清らかな心の方が多ければ天界に残り、そうでない者は地獄に堕ちる。
その審判のため、ここに連れて来るのだ。」
「なるほど、そういうことだったんですね。」
シュミットは納得し、また魂を迎えに地上へ戻った。
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(今日は、もうリストに載ってる人がいないわ。)
いつもは朝から晩まで魂を迎えに行くシュミットだったが、その日は珍しく夕方前に終わってしまった。
シュミットは、これといってすることもなく、天界の周りをふらふらと漂っていた。
初めての自由な時間に、シュミットは解放的な気分を感じて飛び回り、気が付けば、今まで行ったことのない辺境の場所へ辿り着いていた。
すると、ある一角になにかとても邪な気を感じ、シュミットは不思議に思い、その場所を目指した。
(あ、あれは…!!)
すでに天界に馴染んだシュミットには、そこにいる者が、悪しき者たちだということに気付いた。
本来ならば、地獄にいるはずの悪しき者たちが、天界の近くに集結していたのだ。
(な、なぜ、あのような者たちがこんなところに…!?)
「何者だ!?」
不意にひとりの悪しき者がシュミットの方を振り向き、大きな声を上げた。
シュミットは、反射的にその場から逃げ出した。
「あいつを捕まえろ!」
十数名の魔物たちが、シュミットを追いかけて来る。
シュミットは、必死になって逃げる。
だが、魔物たちの速度は思いの外速く、このままではもうすぐに追いつかれてしまう。
シュミットは、迫り来る恐怖に涙を流し、無意識に叫んだ。
「おじいちゃん!助けて!!」
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