Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
4 / 697
001. 砂の城

しおりを挟む
「そうかそうか、そりゃあ、よく訪ねてくれたな。
今、ちょうど夕飯を食べようとしていた所なんじゃ。
 良かったらあんたらも一緒にどうじゃ?」

ストック爺さんの家っていうのは、町外れの隣町に続く街道の近くにあった。
俺達が、小人の村のことを尋ねると、逆に「あんたらは小人がいると信じているのか?」と尋ねられ、それに頷くと爺さんは途端に笑顔になった。

爺さんは、俺達に夕食までもてなしてくれて、それがすむと酒をちびりちびりとやりながら、小人の村のことを話してくれた。
なんでも、爺さんが小人に興味を持ったのは、数十年程昔の頃のことらしい。
その頃、知り合いの木こりの仕事を手伝っていた爺さんはある日忘れ物を取りに夜の山へ向かった。
その時、山の中で小人をみかけ、驚いた爺さんは早速それを知り合いに話した所、動物か何かを見間違えたのだと一笑に付されたらしい。
爺さんは、友達にもそのことを話したが、その反応は皆同様で、誰一人として信じてくれる者はいなかったらしいんだ。



「じゃがな、あれは間違いなく小人だったんじゃ!
あの時は夜だったとはいえ月が明るかったし、今とは違って目もはっきりしておった。
動物と小人を見間違うわけがなかろう?
なんせ、小人は服を着てその上帽子までかぶっとったんじゃからな。」

「帽子…!?
なぁ、爺さん、小人はどんな帽子をかぶってたんだ?
顔は覚えてるか?」

「あぁ、はっきり覚えとる。
小人は、可愛いものだと思っとる者が多いだろうが、意外とそうでもないんじゃ。
耳も目も鼻もやたらとでかくてな、緑色の布で作られた三角の帽子をかぶっておった。」

「爺さん!その小人、頭がはげてなかったか!?」

「はげて…?」

爺さんはそう言いながら腕を組み、当時の記憶を辿るようにじっと目を閉じる。



「……いや、帽子をかぶっとったからそれはどうだかわからんが…言われてみたら、髪の毛は全く見えなかったような気もする…」

爺さんの言葉に、俺の鼓動は一気に速くなった。
同じだ…
帽子の色は違うけど、きっと同じ小人だ!
いや、俺が会ったのとは違う奴かもしれないけど、同じ種類の小人であることは間違いない。



「どうかしたのか?」

「爺さん!俺もそいつに会ったんだ!」

「なんじゃと……!?」

 「その山っていうのはどこのことなんだ!?」



話を聞いてみると、爺さんが小人を見たっていう山は、俺が両親とキャンプに行った場所と目と鼻の先の山だった。
見た時期はずいぶんと違うものの、そのあたりで見かけられた小人の村がなぜこの遠く離れたマザークロスにあるのかという疑問がわきあがった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
コミュニティ「1ページ同好会」のお題で書いたお話です。 第3弾!

二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰
ファンタジー
中世の考えや方向性が強く残る世界に転生した二人の少女。 同じ家に双子として生まれ、全く同じ教育を受ける二人の違いは容姿や考え方、努力するかしないか。 そして、ゲームの世界だと思い込むか、中世らしき不思議な世界と捉えるか。 片手で足りる違いだけ、後は全く同じ環境で育つ二人が成長と共に周りにどう思われるのか、その比較をご覧ください。 処女作になりますので、おかしなところや拙いところがあるかと思いますが、よろしければご覧になってみてください。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

死を取り扱う精霊の物語

Spitfire
ファンタジー
ある企画に参加してくと共に作成している話 初めて小説と言うものを書くので、脱字やなんやらが多いと思われます。暖かい目で見守ってくれるか、指摘をしてくれるとありがたいです!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...