16 / 23
偽り
16
しおりを挟む
「どうかなさったんですか?」
けたたましく階段を駆け下りたジュリアンに、マージが声をかけた。
「あ…マージ…
実はな…ハリーが…あ……」
「ハリーが?ハリーがどうかしたんですか?」
ジュリアンはついうっかりと口を滑らせてしまったことを後悔したがもう遅い…
「マージ…実は、ハリーが町を出ていってしまったんだ…」
「ハリーが、この町を?
そ、そんな…なぜ?なぜなんですか?」
「ハリーのおふくろさんが病気で、おふくろさんの治療のために温泉の近くに行こうとしてたみたいなんだけど、思い当たる場所はないかい?」
「わ…私…そんなことまったく知りませんでした。
ハリーのお母さんがご病気だってこともなにも…
ジュリアンさん、あなたはなぜそんなことをご存知なんですか?」
「あぁ、ちょっとしたことでハリーと知り合ってな。
でも、こんな早くに出て行くなんて思ってなかったから、俺も驚いてるんだ…」
「ハリー…ひどい…
ひどいわ。
そんなこと、一言も私に言ってくれないなんて…」
「あ!マージ!!」
マージは涙に濡れた瞳を潤ませながら、店の奥へ走って行った。
(まいったな…
これじゃあ、この前と全く同じじゃないか…
とにかく、マージから目を離さないようにしないとな…)
それからのジュリアンは、一日の大半をマージに貼りつき、注意深く観察を続けた。
マージは、ハリーのことで傍目からもはっきりとわかるほどひどく沈んでる様子だったが、それでも、なんとか宿屋の仕事はこなしている。
それから半月程が経ち、このあたりにハリケーンが近付いて来ているとの話が飛びこんで来た。
(ヤバイ!
ついにあの日が来やがったか…!)
噂通り、雨風はだんだんと激しさを増して来ている。
「ちょっと、外の様子を見てくる。」
「なんだ、こんな時に…」
「今はまだそれほどじゃないからな。
マージが流された川を見てこようと思ってな。」
そう言って外に出たジュリアンはそこで思いがけない人物に再会した。
けたたましく階段を駆け下りたジュリアンに、マージが声をかけた。
「あ…マージ…
実はな…ハリーが…あ……」
「ハリーが?ハリーがどうかしたんですか?」
ジュリアンはついうっかりと口を滑らせてしまったことを後悔したがもう遅い…
「マージ…実は、ハリーが町を出ていってしまったんだ…」
「ハリーが、この町を?
そ、そんな…なぜ?なぜなんですか?」
「ハリーのおふくろさんが病気で、おふくろさんの治療のために温泉の近くに行こうとしてたみたいなんだけど、思い当たる場所はないかい?」
「わ…私…そんなことまったく知りませんでした。
ハリーのお母さんがご病気だってこともなにも…
ジュリアンさん、あなたはなぜそんなことをご存知なんですか?」
「あぁ、ちょっとしたことでハリーと知り合ってな。
でも、こんな早くに出て行くなんて思ってなかったから、俺も驚いてるんだ…」
「ハリー…ひどい…
ひどいわ。
そんなこと、一言も私に言ってくれないなんて…」
「あ!マージ!!」
マージは涙に濡れた瞳を潤ませながら、店の奥へ走って行った。
(まいったな…
これじゃあ、この前と全く同じじゃないか…
とにかく、マージから目を離さないようにしないとな…)
それからのジュリアンは、一日の大半をマージに貼りつき、注意深く観察を続けた。
マージは、ハリーのことで傍目からもはっきりとわかるほどひどく沈んでる様子だったが、それでも、なんとか宿屋の仕事はこなしている。
それから半月程が経ち、このあたりにハリケーンが近付いて来ているとの話が飛びこんで来た。
(ヤバイ!
ついにあの日が来やがったか…!)
噂通り、雨風はだんだんと激しさを増して来ている。
「ちょっと、外の様子を見てくる。」
「なんだ、こんな時に…」
「今はまだそれほどじゃないからな。
マージが流された川を見てこようと思ってな。」
そう言って外に出たジュリアンはそこで思いがけない人物に再会した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天使からの贈り物・誤算
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンとエレスの旅物語・第4弾です。
ある町で、ジュリアンはネイサンとポールという二人の炭鉱夫と仲良くなった。
その出会いは、ジュリアンに深い心の傷を与えることに…
天使の探しもの
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
創造主との賭けにより、身体を二つに分けられ、一切の能力をも奪われて地上に落とされた天使・ブルーとノワールは、遠く離れた場所にいた。
しかし、天界に戻るためには、二人が出会わなければならない。
二人は数々の苦難を乗り越え、そして……
※表紙画は詩乃様に描いていただきました。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

天使からの贈り物・夢
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
たまたま入ったレストランには、とても気持ちの良い絵が飾られていた。
ジュリアンは、その絵を描いた画家志望の青年・アルドーとその恋人・ライラと関わることに…
ジュリアンとエレスの旅物語・第3弾!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる