9 / 23
偽り
9
しおりを挟む
「マージ!!
なんで、こんなことに…」
マージの母は、冷たくなったマージの亡骸に取りすがって号泣し、その傍らには呆然と立ち尽くす夫の姿があった。
「……あんたのせいだ!
あんたが、マージの本当の気持ちを知っていながら、ケネス様との縁談を進めたからこんなことになったんだ!」
「そ…そんなこと…
マージは…自分からケネス様と結婚するって言ったんだ…」
「うちがケネス様に借金してるから、それであの子はいやだって言い出せなかったんだよ!可哀想なマージ…
ハリーは…ハリーは来てないのかい?!」
「探して来る。」
マージの父は、外へ飛び出して行った。
*
「なんだか、下が騒がしいみたいだな。
俺、ちょっと見てくるよ。」
『……相変わらず、野次馬だな…』
ジュリアンが下に降りて行くと、そこには大勢の人が集まり、女性達のすすり泣く声が部屋の中に悲しげに響いていた。
ただならぬ雰囲気を感じたジュリアンは一人の男に声をかけた。
「おい、なにかあったのか?」
「マージが、死んだんだとよ。」
「マ、マージが?!まさか!!」
「本当さ…さっき、川下で遺体が見つかったらしいんだ。」
「な、なんだって、そんなことに…」
「なんでも、気の進まない結婚をすすめられたみたいだぜ。
借金をしてる相手と結婚するのがいやで、身を投げたって話だ。
やっぱり、マージはハリーのことが好きだったんだなぁ…可哀想になぁ…」
男の話に、ジュリアンの鼓動は早鐘を打ち出した。
「なんだって!?でも、ハリーは他の町の女と結婚して…」
「ハリーが結婚?
馬鹿言うなよ。
ハリーは、病気のおふくろさんを連れてこの町を出て行ったんだ。
おふくろさんの身体に良い温泉の近くの町に行って働くって言ってたぜ。」
「あんた、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「なんでって、俺は奴とは家が近いし、ずっと同じ炭坑で働いてたからな。」
「今の話、本当に本当なんだな?!
ハリーは誰とも結婚なんてしないんだな?」
「あぁ、間違いないさ。
ハリーはほとんどこの町から出たことがない。
しかも、朝から晩まで働いて、その上おふくろさんの看病をしてたんだ。
どうやって他の町の女と知り合うっていうんだよ!」
「そ…そんな…
じゃあ…ハリーは、マージに自分のことを諦めさせるためにあんな嘘を…
なのに、俺が、マージにそのまんま言っちまったから、マージは…
な…なんてことだ…!!
お、俺の…俺のせいだ…!」
なんで、こんなことに…」
マージの母は、冷たくなったマージの亡骸に取りすがって号泣し、その傍らには呆然と立ち尽くす夫の姿があった。
「……あんたのせいだ!
あんたが、マージの本当の気持ちを知っていながら、ケネス様との縁談を進めたからこんなことになったんだ!」
「そ…そんなこと…
マージは…自分からケネス様と結婚するって言ったんだ…」
「うちがケネス様に借金してるから、それであの子はいやだって言い出せなかったんだよ!可哀想なマージ…
ハリーは…ハリーは来てないのかい?!」
「探して来る。」
マージの父は、外へ飛び出して行った。
*
「なんだか、下が騒がしいみたいだな。
俺、ちょっと見てくるよ。」
『……相変わらず、野次馬だな…』
ジュリアンが下に降りて行くと、そこには大勢の人が集まり、女性達のすすり泣く声が部屋の中に悲しげに響いていた。
ただならぬ雰囲気を感じたジュリアンは一人の男に声をかけた。
「おい、なにかあったのか?」
「マージが、死んだんだとよ。」
「マ、マージが?!まさか!!」
「本当さ…さっき、川下で遺体が見つかったらしいんだ。」
「な、なんだって、そんなことに…」
「なんでも、気の進まない結婚をすすめられたみたいだぜ。
借金をしてる相手と結婚するのがいやで、身を投げたって話だ。
やっぱり、マージはハリーのことが好きだったんだなぁ…可哀想になぁ…」
男の話に、ジュリアンの鼓動は早鐘を打ち出した。
「なんだって!?でも、ハリーは他の町の女と結婚して…」
「ハリーが結婚?
馬鹿言うなよ。
ハリーは、病気のおふくろさんを連れてこの町を出て行ったんだ。
おふくろさんの身体に良い温泉の近くの町に行って働くって言ってたぜ。」
「あんた、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「なんでって、俺は奴とは家が近いし、ずっと同じ炭坑で働いてたからな。」
「今の話、本当に本当なんだな?!
ハリーは誰とも結婚なんてしないんだな?」
「あぁ、間違いないさ。
ハリーはほとんどこの町から出たことがない。
しかも、朝から晩まで働いて、その上おふくろさんの看病をしてたんだ。
どうやって他の町の女と知り合うっていうんだよ!」
「そ…そんな…
じゃあ…ハリーは、マージに自分のことを諦めさせるためにあんな嘘を…
なのに、俺が、マージにそのまんま言っちまったから、マージは…
な…なんてことだ…!!
お、俺の…俺のせいだ…!」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天使の探しもの
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
創造主との賭けにより、身体を二つに分けられ、一切の能力をも奪われて地上に落とされた天使・ブルーとノワールは、遠く離れた場所にいた。
しかし、天界に戻るためには、二人が出会わなければならない。
二人は数々の苦難を乗り越え、そして……
※表紙画は詩乃様に描いていただきました。

天使からの贈り物・誤算
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンとエレスの旅物語・第4弾です。
ある町で、ジュリアンはネイサンとポールという二人の炭鉱夫と仲良くなった。
その出会いは、ジュリアンに深い心の傷を与えることに…

天使からの贈り物・夢
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
たまたま入ったレストランには、とても気持ちの良い絵が飾られていた。
ジュリアンは、その絵を描いた画家志望の青年・アルドーとその恋人・ライラと関わることに…
ジュリアンとエレスの旅物語・第3弾!

天使からの贈り物・衝動
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ある時、ジュリアンが掘り出したのは、とても見事なエレスチャルだった。
しかも、そのエレスチャルには石の精霊が棲んでいて……
シリーズ第1弾です。
angel observerⅡ 六神の加護
蒼上愛三(あおうえあいみ)
ファンタジー
「天使を観測してくれないか」という若田敏彦の依頼を受けたヒルデ、彼女は長きに渡る天使の観測を果たし、その謀略の主犯クロノスとの決戦が終わった。ヒルデたちは、ヒルデ(ゼウス)の兄姉を探す旅に出る。ひょんな事から、若田敏彦の依頼人がギリシャの企業であることから、春休みヒルデ、敏彦、真理亜の3人は、二週間ギリシャに滞在することとなった。しかしそこで、ヒルデたちを待ち受けるものは・・・。
新たな神話が始まる。

天使からの贈り物・決意
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
単細胞の石好き男・ジュリアンと、石の精霊・エレスの不思議な旅物語・第5弾!
旅の途中でジュリアンが知り合ったのは、ラリーとスージーという仲の良い兄妹だった。
もうじき結婚することが決まっていたスージーの身に、とんでもないことが起きて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる