8 / 23
偽り
8
しおりを挟む
ハリーとマージは二人ともこの町で生まれ育った。
お互いがなんとなく意識をし始めるようになったのは、子供から大人へ変わる頃だった。
それからの二人は、一緒に過ごす歳月と共にお互いが大切な人となっていった……はずだった。
(ハリー…私の片想いだったのね…
今頃気付くなんて、私ってなんて馬鹿な女なのかしら…)
ハリーがこの町からいなくなったという事実は、マージの心に大きな傷を付けた。
マージが自分でも気付いていない程、深くて大きな傷を…
もう、この世のすべてのことが終わってしまったような気分をマージは感じていた。
*
『採掘の方は、あんまり成果があがらないようだな。』
「あぁ、今日もたいしたものは出なかった。」
『そういえば、マージの結婚が正式に決まったそうだな…』
「そうらしい。
親父さんがやけに嬉しそうに話してたぜ。
やっぱり、ハリーのことで踏ん切りがついたのかもしれないな。」
『お互い、幸せになれて良かったじゃないか。』
「そうだな。うらやましい限りだな。」
『これでおまえももう気がかりなことはなくなっただろう?
そろそろ、先へ進むか?』
「そうした方が良さそうだな。」
しかし、そんな矢先、このあたりにハリケーンが近付いているとの話が飛びこんで来た。
「くっそー、これじゃあ、ハリケーンが過ぎ去るまでここに足止めだな。」
『幸い、ここは修繕したばかりらしいから、たとえハリケーンが直撃してもきっと安全だぞ。』
「だけど、外にも行けないなんて退屈だなぁ…」
次の日の夕刻あたりから雨風が酷くなって来た。
しかし、幸い、今回のハリケーンは思った程の威力ではなく、さらに次の日になると風雨はだんだんと和らぎ過ぎ去って行ってくれた。
たいした被害も出ず、町の皆がほっと胸をなでおろした時のこと…
「マージが…マージがいないんだ!
誰か、マージをみかけた者はいないか?!」
マージの父親の呼びかけにより、町の皆がマージを探したが、彼女の姿はみつからなかった。
「一体、どうなってるんだ?
マージがいなくなるなんて…
まさか、ハリケーンの時に外にでも出て…」
それから、数日が経ったある日…
ジュリアンの予想が最悪の現実となってしまった。
マージの亡骸が、川下でみつかったのだ…
お互いがなんとなく意識をし始めるようになったのは、子供から大人へ変わる頃だった。
それからの二人は、一緒に過ごす歳月と共にお互いが大切な人となっていった……はずだった。
(ハリー…私の片想いだったのね…
今頃気付くなんて、私ってなんて馬鹿な女なのかしら…)
ハリーがこの町からいなくなったという事実は、マージの心に大きな傷を付けた。
マージが自分でも気付いていない程、深くて大きな傷を…
もう、この世のすべてのことが終わってしまったような気分をマージは感じていた。
*
『採掘の方は、あんまり成果があがらないようだな。』
「あぁ、今日もたいしたものは出なかった。」
『そういえば、マージの結婚が正式に決まったそうだな…』
「そうらしい。
親父さんがやけに嬉しそうに話してたぜ。
やっぱり、ハリーのことで踏ん切りがついたのかもしれないな。」
『お互い、幸せになれて良かったじゃないか。』
「そうだな。うらやましい限りだな。」
『これでおまえももう気がかりなことはなくなっただろう?
そろそろ、先へ進むか?』
「そうした方が良さそうだな。」
しかし、そんな矢先、このあたりにハリケーンが近付いているとの話が飛びこんで来た。
「くっそー、これじゃあ、ハリケーンが過ぎ去るまでここに足止めだな。」
『幸い、ここは修繕したばかりらしいから、たとえハリケーンが直撃してもきっと安全だぞ。』
「だけど、外にも行けないなんて退屈だなぁ…」
次の日の夕刻あたりから雨風が酷くなって来た。
しかし、幸い、今回のハリケーンは思った程の威力ではなく、さらに次の日になると風雨はだんだんと和らぎ過ぎ去って行ってくれた。
たいした被害も出ず、町の皆がほっと胸をなでおろした時のこと…
「マージが…マージがいないんだ!
誰か、マージをみかけた者はいないか?!」
マージの父親の呼びかけにより、町の皆がマージを探したが、彼女の姿はみつからなかった。
「一体、どうなってるんだ?
マージがいなくなるなんて…
まさか、ハリケーンの時に外にでも出て…」
それから、数日が経ったある日…
ジュリアンの予想が最悪の現実となってしまった。
マージの亡骸が、川下でみつかったのだ…
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天使の探しもの
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
創造主との賭けにより、身体を二つに分けられ、一切の能力をも奪われて地上に落とされた天使・ブルーとノワールは、遠く離れた場所にいた。
しかし、天界に戻るためには、二人が出会わなければならない。
二人は数々の苦難を乗り越え、そして……
※表紙画は詩乃様に描いていただきました。

天使からの贈り物・誤算
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンとエレスの旅物語・第4弾です。
ある町で、ジュリアンはネイサンとポールという二人の炭鉱夫と仲良くなった。
その出会いは、ジュリアンに深い心の傷を与えることに…

天使からの贈り物・夢
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
たまたま入ったレストランには、とても気持ちの良い絵が飾られていた。
ジュリアンは、その絵を描いた画家志望の青年・アルドーとその恋人・ライラと関わることに…
ジュリアンとエレスの旅物語・第3弾!

天使からの贈り物・衝動
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ある時、ジュリアンが掘り出したのは、とても見事なエレスチャルだった。
しかも、そのエレスチャルには石の精霊が棲んでいて……
シリーズ第1弾です。
angel observerⅡ 六神の加護
蒼上愛三(あおうえあいみ)
ファンタジー
「天使を観測してくれないか」という若田敏彦の依頼を受けたヒルデ、彼女は長きに渡る天使の観測を果たし、その謀略の主犯クロノスとの決戦が終わった。ヒルデたちは、ヒルデ(ゼウス)の兄姉を探す旅に出る。ひょんな事から、若田敏彦の依頼人がギリシャの企業であることから、春休みヒルデ、敏彦、真理亜の3人は、二週間ギリシャに滞在することとなった。しかしそこで、ヒルデたちを待ち受けるものは・・・。
新たな神話が始まる。

天使からの贈り物・決意
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
単細胞の石好き男・ジュリアンと、石の精霊・エレスの不思議な旅物語・第5弾!
旅の途中でジュリアンが知り合ったのは、ラリーとスージーという仲の良い兄妹だった。
もうじき結婚することが決まっていたスージーの身に、とんでもないことが起きて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる