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偽り
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ジュリアンはハリーにひきずられるようにどこかへ連れ去られた。
連れて行かれた先はすぐ近くの酒場だった。
「さっきはすまなかったな。
あんたを巻き込むようなことになってしまって…」
「そんなことはかまわねぇが…一体、何がどうなってるんだよ?」
「それが……
そういえば…あんた、誰なんだ?」
「誰って…俺はジュリアンって者で…
ついさっきこの町に着いてあの宿屋に泊まろうと思ってたんだけど…」
「そうだったのか。
それはすまなかったな。
俺は、ハリーだ。
さっきのおわびにおごるから、好きなだけ飲んでくれよ!」
ハリーは、人懐っこい笑顔を浮かべると、大きな手でジュリアンの背中を叩いた。
「そうか、ありがとうよ、ハリー。
それで、さっきのあれは…」
「あぁ…あれはなんでもないんだ。」
「なんでもないってわけないだろう。
あの娘は、あんたの恋人なんだろう?」
「まさか…!
マージはただの友達さ。
彼女には、ケネスっていう婚約者がいるんだからな。」
「婚約者が?!
しかし、さっきの様子じゃ…」
「もうそんなことは良いじゃないか!
さぁ、これもなにかの縁だ!
飲もうじゃないか!」
ハリーは、ジュリアンがいくら聞いてもマージについての話には答えようとはしなかった。
初対面だと言うのにも関わらず二人はすっかり打ち解け、気分良く飲んだ後、ジュリアンは、再び、先程の宿屋へ向かった。
「あの…泊まりたいんだけど、部屋はあるかな?」
「ええ…ございますよ。
今、ご案内します。」
応対したのは、ハリーと揉めていたあの女性・マージだった。
「あ…あのさ…
あんた、ハリーの恋人なんだろう?」
「え…?!
あなた、ハリーのお知り合いなんですか?」
「知り合いっていえば、知り合いかな…
ついさっきまで一緒に飲んでたんだ。」
「それで…ハリーは私のことはなにか言ってませんでしたか?」
「いや…
ハリーは、あんたとはただの友達だって言ってた。
だけど、俺にはそうは思えなかったから、それであんたに聞いてみたんだ。」
「……ただの友達……
ハリーが、私のことをそんな風に…」
マージは明らかに落胆した表情で深く俯いた。
「お、おい、そんな顔するなよ…」
「取り乱してすみません…
お部屋へご案内します。」
「俺で良かったら、相談に乗るぜ!」
「……もう良いんです。」
マージはジュリアンを二階の部屋へ案内すると、そのまま黙って下へ戻って行った。
連れて行かれた先はすぐ近くの酒場だった。
「さっきはすまなかったな。
あんたを巻き込むようなことになってしまって…」
「そんなことはかまわねぇが…一体、何がどうなってるんだよ?」
「それが……
そういえば…あんた、誰なんだ?」
「誰って…俺はジュリアンって者で…
ついさっきこの町に着いてあの宿屋に泊まろうと思ってたんだけど…」
「そうだったのか。
それはすまなかったな。
俺は、ハリーだ。
さっきのおわびにおごるから、好きなだけ飲んでくれよ!」
ハリーは、人懐っこい笑顔を浮かべると、大きな手でジュリアンの背中を叩いた。
「そうか、ありがとうよ、ハリー。
それで、さっきのあれは…」
「あぁ…あれはなんでもないんだ。」
「なんでもないってわけないだろう。
あの娘は、あんたの恋人なんだろう?」
「まさか…!
マージはただの友達さ。
彼女には、ケネスっていう婚約者がいるんだからな。」
「婚約者が?!
しかし、さっきの様子じゃ…」
「もうそんなことは良いじゃないか!
さぁ、これもなにかの縁だ!
飲もうじゃないか!」
ハリーは、ジュリアンがいくら聞いてもマージについての話には答えようとはしなかった。
初対面だと言うのにも関わらず二人はすっかり打ち解け、気分良く飲んだ後、ジュリアンは、再び、先程の宿屋へ向かった。
「あの…泊まりたいんだけど、部屋はあるかな?」
「ええ…ございますよ。
今、ご案内します。」
応対したのは、ハリーと揉めていたあの女性・マージだった。
「あ…あのさ…
あんた、ハリーの恋人なんだろう?」
「え…?!
あなた、ハリーのお知り合いなんですか?」
「知り合いっていえば、知り合いかな…
ついさっきまで一緒に飲んでたんだ。」
「それで…ハリーは私のことはなにか言ってませんでしたか?」
「いや…
ハリーは、あんたとはただの友達だって言ってた。
だけど、俺にはそうは思えなかったから、それであんたに聞いてみたんだ。」
「……ただの友達……
ハリーが、私のことをそんな風に…」
マージは明らかに落胆した表情で深く俯いた。
「お、おい、そんな顔するなよ…」
「取り乱してすみません…
お部屋へご案内します。」
「俺で良かったら、相談に乗るぜ!」
「……もう良いんです。」
マージはジュリアンを二階の部屋へ案内すると、そのまま黙って下へ戻って行った。
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