301 / 308
side 優一
10
しおりを挟む
*
「おやまぁ、ずいぶんとしゃれたお店だね!」
まさに、お母さんの言った通りだった。
少しだけ改装すると聞いていたけど、以前のごく平凡な花屋の雰囲気はそこにはもう微塵もなかった。
明るくおしゃれで、少し離れた所から見ると、カフェにでも間違いそうな雰囲気の店だった。
呆然とする僕を追い越して、篠宮さんは店の鍵を開けてくれた。
「ショーケースも大きくなったんですね。」
「はい、以前のは小さ目でしたから。
これで、以前より多くの花が仕入れられます。」
「あれ?
あそこは?」
奥の方には何か花ではないものが並べられていた。
「はい、あそこでは花やハーブから作られたアロマオイルやハーブティ、ポプリやそれに花のアクセサリー等を販売するんです。
夏美さんのアイディアなんですよ。」
「へぇ……」
なっちゃんまでもがそんな風に店に関わっていたなんて、僕は聞いたこともなかった。
「そして、ここが予約を受けたり、お客様に待っていただく間、寛いでいただくスペースです。
このテーブルと椅子も、夏美さんが選ばれたんですよ。
ほら、あの桃田の家具屋さんで……」
「そうだったんですか。」
「そして、こっちがスタッフルームです。」
そう言って、篠宮さんは扉を開いた。
「以前は、スタッフルームなんてないに等しかったので、本当にありがたいです。
ここのことも亮介さんがいろいろと聞いて下さって、使いやすいように考えて下さったんですよ。
ほら、この棚には荷物が置けますし、ミニキッチンもあるんですよ。
ここでお茶を沸かして、お客様にお出しすることも出来るんです。
これからは突然お客様がいらしても、焦ってお弁当を隠したりしなくてすみます。」
僕が知らない間に、皆が店のことを着々と進めてくれていたことに、僕は驚き、戸惑った。
僕はたいしてやる気もなく、感謝をすることはおろか関心を抱くことさえなく……
なのに、その間、皆は僕のために…そして、この店のためにずっと動いていてくれたんだと思うと、何とも言えない気分になった。
「おやまぁ、ずいぶんとしゃれたお店だね!」
まさに、お母さんの言った通りだった。
少しだけ改装すると聞いていたけど、以前のごく平凡な花屋の雰囲気はそこにはもう微塵もなかった。
明るくおしゃれで、少し離れた所から見ると、カフェにでも間違いそうな雰囲気の店だった。
呆然とする僕を追い越して、篠宮さんは店の鍵を開けてくれた。
「ショーケースも大きくなったんですね。」
「はい、以前のは小さ目でしたから。
これで、以前より多くの花が仕入れられます。」
「あれ?
あそこは?」
奥の方には何か花ではないものが並べられていた。
「はい、あそこでは花やハーブから作られたアロマオイルやハーブティ、ポプリやそれに花のアクセサリー等を販売するんです。
夏美さんのアイディアなんですよ。」
「へぇ……」
なっちゃんまでもがそんな風に店に関わっていたなんて、僕は聞いたこともなかった。
「そして、ここが予約を受けたり、お客様に待っていただく間、寛いでいただくスペースです。
このテーブルと椅子も、夏美さんが選ばれたんですよ。
ほら、あの桃田の家具屋さんで……」
「そうだったんですか。」
「そして、こっちがスタッフルームです。」
そう言って、篠宮さんは扉を開いた。
「以前は、スタッフルームなんてないに等しかったので、本当にありがたいです。
ここのことも亮介さんがいろいろと聞いて下さって、使いやすいように考えて下さったんですよ。
ほら、この棚には荷物が置けますし、ミニキッチンもあるんですよ。
ここでお茶を沸かして、お客様にお出しすることも出来るんです。
これからは突然お客様がいらしても、焦ってお弁当を隠したりしなくてすみます。」
僕が知らない間に、皆が店のことを着々と進めてくれていたことに、僕は驚き、戸惑った。
僕はたいしてやる気もなく、感謝をすることはおろか関心を抱くことさえなく……
なのに、その間、皆は僕のために…そして、この店のためにずっと動いていてくれたんだと思うと、何とも言えない気分になった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる