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side 優一

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 「ただいま~!
あ……なんか良いにおい。」

 「お帰り。」

 「あ、堤さん……起きてらっしゃったんですか?」



 幼稚園の終わった小太郎を連れ、篠宮さんが来てくれた。



 「篠宮さん、この度は本当にお世話になりました。
もうほとんど元気になりましたから、明日からは大丈夫だと思います。」

 「そうですか……それは良かったです。」

 篠宮さんはそう言って小さく微笑んだ。
それは、どこか影のある微笑みのように思えたが、僕の気のせいなのかもしれない。



 「小太郎、おやつ出来てるぞ!
 早く、手を洗って着替えておいで。」

 「は~い!」

 小太郎は、バタバタと洗面所に駆けて行く。
いそいそとそれに着いて行く篠宮さんは、なんだか小太郎の母親みたいだ。
もしかしたら、篠宮さんにも小太郎と同じくらいの子供でもいるんだろうか?
 年齢から推測すると、もう少し大きな子供がいそうだけど、何歳で産むかは人によって違うのだから、そのくらいの子供がいてもおかしくはない。



そんなことを考えながら、僕はキッチンに立ち、アップルパイの盛り付けを始めた。
 今日は、小太郎だけじゃなく、僕と篠宮さんの分も。
 温かいアップルパイに、バニラのアイスクリームを添え、ミントの葉を飾る。
 本当なら生クリームでも絞りたいところだけど、あいにくうちには生クリームも絞り器もなかった。
 今まで、そこまで凝ったおやつは作ったことがなかったから。
 今度それらも買っておこうと思った。



 (けっこう良い感じだ。)

 僕は、その出来栄えに満足した。
 自然に笑みが浮かんで来る。
そのことがおかしくて、僕はまた笑った。 
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