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side 香織

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 10年以上かかってコツコツ貯めた貯金は、みるみるうちに減っていった。
このままではいけないと、私は職場と家の中間あたりの繁華街にある居酒屋で働くことにした。
 7時から0時までの5時間のバイトだ。
 休まずに働けば、貯金をおろさずに、智君に10万あげて、会う時に使うお金やたまに智君へのプレゼントを買う時のお金になる。
 母には、友達のお母さんが倒れたので、その小料理屋を手伝うと言っておいた。
それほど長い間じゃない。
 母は、詮索好きでもないし、バレることはないと思った。



お互いが忙しいから、智君とのメールはめっきり減った。
でも、それを寂しいと思うだけのゆとりもなかった。
 居酒屋はとにかく忙しく、そのせいで疲れも激しい。
 私は最初のひと月で、いきなり5キロも体重が減った。
だけど、智君やお母さんが喜んでくれると思うと、少しも辛くはなかった。
 多少、ぽっちゃりしてたから、ダイエットが出来たと思えば、却って嬉しいくらいだった。



 今、目の前にあるこの壁を乗り越えれば、智君との明るい未来が待っている……
そう考えるだけで、私の胸が弾んだ。
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