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side 香織

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「どうしてもっと早く話してくれなかったの!?」

 「こんなこと、話せないよ!
かおりに心配かけたくないもん!」



この間、会った日の次の日、お母さんの容態が急に悪くなったとのことだった。
 緊急に手術をすることになり、その手術費用が必要になった。
そのために、智君はいつも以上に働いてたから、メールもあまり出来なかったとのことだった。



 「水臭いこと言わないで!
そりゃあ、私なんかに出来ることはあんまりないけど、それでもなにか少しくらいは出来ることもあるだろうし、私に出来ることならなんでもするから。」

 「何言ってるんだよ。
 僕はかおりの顔見るだけで、どんなに励まされることか……
それに、こんな情けない僕にそんな優しい言葉をくれる……
かおりの優しさのおかげで僕は生きてられるようなもんだよ。」

 「智君ったら、大げさなんだから!」

 口ではそう言いながらも、本当は感動で胸がいっぱいになっていた。
 智君が私のことをそんな風に思ってくれてるなんて……
ふと見ると、智君は、ただ黙って私のことをみつめていて、その視線があまりに素敵で、私はなんだか恥ずかしくなって……



「そんなことより、智君、ちゃんとごはん食べてる?
お腹すいてるんじゃない?
 私、お腹ぺこぺこだよ。
ねぇ、何か食べに行こうよ。」

 心の中とは裏腹に、そんなことを言って、その場の雰囲気を無理やり変えた。



 「じゃあ、ここで食べようか?」


まさか、ラブホで食事まで出来るとは思わなかった。
 智君が注文してくれてる間に、私は封筒に10万のお金を入れた。
それはこれからもデートの度に服を買ったり、食事代を出そうと思って下ろしておいたお金だった。
 手術がいくらかかるのかわからないけど、少しはたしになるだろう。
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