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side 優一

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 「今日はやけにたくさん買うのね。」

 山積みになったカゴの中を見ながら、なっちゃんが呟いた。



 「うん…しょっちゅうファミレスや店屋物っていうのもあれだから、これからは家で作ろうと思って……」

 「えっ!?あんた、料理なんて出来るの?」

 「出来るって程じゃないけど、一応は自炊してたんだから……」



それは、自炊なんて言えるようなものじゃなかった。
たいていは、お惣菜か冷凍食品かレトルトだったから、たまに焼きそばを炒めるくらいがせいぜいのことだ。
でも、そういうものでも外食よりは安くつくはずだ。
なっちゃんの貯金があとどのくらいあるのかはわからないけど、少しでも出費を抑えようと僕はそんなことを考えたんだ。



 *



 「このハンバーグ、すっごく美味しい!
パパ、明日もこれにしてね!」

 「そうか。そんなにおいしいか。」

ただ温めただけのハンバーグを小太郎に褒められ、僕はこそばゆい気持ちを感じてた。
なっちゃんは、そんな僕の気持ちに気付いてるのか、僕を見てにやっと笑う。



それにしても、確かに美味しい。
 値段から考えると、そんなに良い肉を使ってるはずもないけど、どうしてこんなに柔らかくてジューシーでおいしいものが作れるんだろう?
ソースの味もとても良い。
そういえば、僕が小さい頃は、母さんはこういうものも手作りしてたような気がする。
ハンバーグだけじゃなくて、なんでもレトルトなんか使わず手作りしてた。
そのせいか、夕方はとにかく忙しそうで……
長い時間、台所にこもったまま、いろんな料理を作ってた。
 父さんが帰って来る時間に近づくにつれ、台所からはとても美味しそうなにおいがして来て、なっちゃんはよくつまみ食いをしてたっけ。


ずっと思い出すこともなかった遠い昔の記憶が頭をかすめ、懐かしさと切なさに僕の心は埋め尽くされた。 
 
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