13 / 64
004:調律師
3
しおりを挟む
「こんな所に……?」
セルジュの漏らした呟きに、私も心の中で共感を覚えていた。
グレンに連れられ、私とセルジュは隣町まで行くことになったのだが、あれほど探してもみつからなかった町の「出口」がすぐ傍にあったことに私達は驚いていたのだ。
町を出ると、そこからはなだらかな道が続き、遠くの方にうっすらと隣町の輪郭が見えている。
つまり、これは隣町へ行っても良いということ…
いや、おそらくは、隣町へ行く必要があるということなのだろうと、私は思った。
「どうしたんだ?二人とも、深刻な顔をして…」
「いや…たいしたことじゃない。」
「もしかしたら、君達は、隣町へ行くのは初めてなのかい?」
「あぁ、そうだ。」
「そういえば、君達はどこから来たんだい?
町では今まで見かけたことはなかったように思うんだけど、最近、越して来たのかい?」
「いや…私達は…旅をしているんだ。」
「そうだったのか!?
それにしては、えらく身軽だな。
荷物はないのかい?」
「荷物は…」
「……じ、実は、荷物は、ここへ来る途中ですっかり盗まれてしまったんだ。」
「それは大変だったな!
金もすっかりいかれたのか?」
「そ、そうなのだ…それで、私達もほとほと困ってた所なのだ。」
セルジュの口から突然飛び出した嘘に私も便乗しておいた。
こう言っておいた方が後々都合が良いかもしれないと思ったからだ。
どうせ、本当のことを話しても信じてはもらえないだろうから…
「僕に出来る事があれば、なんでも言ってくれよ。」
「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ。」
グレンのその言葉は単なる社交辞令ではないだろうと思えた。
今までの印象で、彼が率直な男だということがよくわかるからだ。
隣町まではすぐだった。
石畳の町とはうって変わり、人影もまばらでとても静かな町だった。
「ここはえらく静かなんだな。」
「そう言われればそうだな。
ここは元々は石畳の町から出た人達が作った町らしいんだ。」
「なんでこんな近くに?」
「さぁ、そこまではわからないな。
なんせずいぶん昔のことだからな。」
町の広さはまだよくはわからないが、家の数が少ないのは確かだ。
木がやたらと多く、まるで森の中に町を作ったような印象だ。
「あの家だ!」
しばらく歩いているうちに、グレンが一軒の屋敷を指差した。
セルジュの漏らした呟きに、私も心の中で共感を覚えていた。
グレンに連れられ、私とセルジュは隣町まで行くことになったのだが、あれほど探してもみつからなかった町の「出口」がすぐ傍にあったことに私達は驚いていたのだ。
町を出ると、そこからはなだらかな道が続き、遠くの方にうっすらと隣町の輪郭が見えている。
つまり、これは隣町へ行っても良いということ…
いや、おそらくは、隣町へ行く必要があるということなのだろうと、私は思った。
「どうしたんだ?二人とも、深刻な顔をして…」
「いや…たいしたことじゃない。」
「もしかしたら、君達は、隣町へ行くのは初めてなのかい?」
「あぁ、そうだ。」
「そういえば、君達はどこから来たんだい?
町では今まで見かけたことはなかったように思うんだけど、最近、越して来たのかい?」
「いや…私達は…旅をしているんだ。」
「そうだったのか!?
それにしては、えらく身軽だな。
荷物はないのかい?」
「荷物は…」
「……じ、実は、荷物は、ここへ来る途中ですっかり盗まれてしまったんだ。」
「それは大変だったな!
金もすっかりいかれたのか?」
「そ、そうなのだ…それで、私達もほとほと困ってた所なのだ。」
セルジュの口から突然飛び出した嘘に私も便乗しておいた。
こう言っておいた方が後々都合が良いかもしれないと思ったからだ。
どうせ、本当のことを話しても信じてはもらえないだろうから…
「僕に出来る事があれば、なんでも言ってくれよ。」
「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ。」
グレンのその言葉は単なる社交辞令ではないだろうと思えた。
今までの印象で、彼が率直な男だということがよくわかるからだ。
隣町まではすぐだった。
石畳の町とはうって変わり、人影もまばらでとても静かな町だった。
「ここはえらく静かなんだな。」
「そう言われればそうだな。
ここは元々は石畳の町から出た人達が作った町らしいんだ。」
「なんでこんな近くに?」
「さぁ、そこまではわからないな。
なんせずいぶん昔のことだからな。」
町の広さはまだよくはわからないが、家の数が少ないのは確かだ。
木がやたらと多く、まるで森の中に町を作ったような印象だ。
「あの家だ!」
しばらく歩いているうちに、グレンが一軒の屋敷を指差した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる