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サンダル(やぎ座)
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海でさんざん泳いでさぁ帰ろうという時になって、私のそのサンダルが片方なくなってることに気が付いた。
バスタオルと着てきたワンピースや帽子等をかためて砂浜に置いてたのは無用心だったかもしれないけど、周りの人達もそうしてる。
しかも、財布や携帯ももって来てないし、鍵まで鉢植えの下に隠して来たし、貴重品はないから心配なんてしてなかった。
第一、サンダルを片方盗っていく人なんているだろうか?
どうせ盗るなら両方にするだろう。
犬がくわえていったんじゃないかとか、いや、烏がくわえて行ったのかも…とか、波にさらわれたとか、子供が持ってたんじゃないかとか、さんざん推測は出たけれど、結局、サンダルはみつからず、だからこそどうなったかもわからない。
次の年は、真理さんの親戚に不幸があり、お盆は実家に戻る事になったので海には行けず、その次の年、私達は三度目の海にやって来た。
いつもと変わらない三人の夏休み…
普段もしょっちゅう顔を合わしているくせに、場所が変わるとそれだけでどこか新鮮な気分になれる。
「それにしても…」
短い休みが終わり、駅への道程を歩いている時、真理さんがぽつりと呟いた。
「……今年も三人一緒に旅行に来れたのは良い事なのか、悲しむことべきことなのか…」
「……確かに複雑だね。
楽しいのは楽しいけど、まだ誰も結婚しないどころか、彼氏さえいない…」
そういうと美紀は涙を拭う振りをした。
「このまま、還暦あたりになっても三人でここに来てたらどうしよう!?」
「逆に、還暦まで来たら、きっと諦められると思うよ。」
「それもそうだね!」
三人はまた声を合わせて笑った。
「あれ…あんな所に…」
しばらくして美紀が前方を見ながら呟いた。
「あ、本当だ。
あんなのいつ出来たんだろう?」
それは喫茶店だった。
店の名前は「シンデレラ」
このあたりには少し不似合いな程、モダンな雰囲気のお店だった。
「なんで来る時に気付かなかったんだろう?」
「行きはタクシーで行ったからじゃない?
ほら…タクシーに乗ってすぐ沙織に電話がかかってきて、携帯がない、ないって騒いでたから…」
美紀に言われて、数日前のその時のことを思い出した。
私の携帯の着うたは某子供向けアニメのテーマソングで、それを運転手に聞かれるのがはずかしくて焦って携帯を探したことを…
「せっかくだから、ちょっと寄っていこうか。」
美紀の提案に異を唱える者はなかった。
店の扉を開けた瞬間、私達の視線は店の中央に置かれた同じものに釘付けになっていた。
バスタオルと着てきたワンピースや帽子等をかためて砂浜に置いてたのは無用心だったかもしれないけど、周りの人達もそうしてる。
しかも、財布や携帯ももって来てないし、鍵まで鉢植えの下に隠して来たし、貴重品はないから心配なんてしてなかった。
第一、サンダルを片方盗っていく人なんているだろうか?
どうせ盗るなら両方にするだろう。
犬がくわえていったんじゃないかとか、いや、烏がくわえて行ったのかも…とか、波にさらわれたとか、子供が持ってたんじゃないかとか、さんざん推測は出たけれど、結局、サンダルはみつからず、だからこそどうなったかもわからない。
次の年は、真理さんの親戚に不幸があり、お盆は実家に戻る事になったので海には行けず、その次の年、私達は三度目の海にやって来た。
いつもと変わらない三人の夏休み…
普段もしょっちゅう顔を合わしているくせに、場所が変わるとそれだけでどこか新鮮な気分になれる。
「それにしても…」
短い休みが終わり、駅への道程を歩いている時、真理さんがぽつりと呟いた。
「……今年も三人一緒に旅行に来れたのは良い事なのか、悲しむことべきことなのか…」
「……確かに複雑だね。
楽しいのは楽しいけど、まだ誰も結婚しないどころか、彼氏さえいない…」
そういうと美紀は涙を拭う振りをした。
「このまま、還暦あたりになっても三人でここに来てたらどうしよう!?」
「逆に、還暦まで来たら、きっと諦められると思うよ。」
「それもそうだね!」
三人はまた声を合わせて笑った。
「あれ…あんな所に…」
しばらくして美紀が前方を見ながら呟いた。
「あ、本当だ。
あんなのいつ出来たんだろう?」
それは喫茶店だった。
店の名前は「シンデレラ」
このあたりには少し不似合いな程、モダンな雰囲気のお店だった。
「なんで来る時に気付かなかったんだろう?」
「行きはタクシーで行ったからじゃない?
ほら…タクシーに乗ってすぐ沙織に電話がかかってきて、携帯がない、ないって騒いでたから…」
美紀に言われて、数日前のその時のことを思い出した。
私の携帯の着うたは某子供向けアニメのテーマソングで、それを運転手に聞かれるのがはずかしくて焦って携帯を探したことを…
「せっかくだから、ちょっと寄っていこうか。」
美紀の提案に異を唱える者はなかった。
店の扉を開けた瞬間、私達の視線は店の中央に置かれた同じものに釘付けになっていた。
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