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フィギュア(おとめ座)

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「出せーーー!
出しやがれーーー!
王子を牢屋に閉じ込めるなんて聞いたことがないぞ!
こらーーー!」

地下にミカエルの罵声と、柵を揺らすがたがたと言う音が空しく響いた。




(畜生!
親父の奴、こんな所に閉じ込めやがって…)

苛立った様子で柵を蹴飛ばし、ミカエルは牢の固い寝台に身を横たえた。




(王子が女遊びをして何が悪い!
そうでなくとも、俺は子供の頃から苦労して…
かっぱで生きて行く事がどれだけ大変なことか親父はわかってないんだ!
わかってたら、少しくらい羽目を外しても、大目に見てくれる筈じゃないか!)

ミカエルの女遊びの酷さは、隣国にまで知れ渡る程になっていた。
毎日のように城を抜け出しては、大酒を飲み女の所にしけこむ。
このままでは、妃に来てくれる者もいないだろうし、国の品位も下がると案じた国王は、ミカエルを地下牢での十日間の謹慎を命じた。
牢の扉には、魔術師の魔法で強力な結界が張られており、その結界をはずすことは術をかけた魔術師以外には当然出来ない。



「ミカエル…元気にしてる?」

「ちぇっ、カパエルか…
元気なわけねぇだろ、こんな所に閉じ込められて…」

「絵本でももって来ようか?
退屈でしょう?」

「おまえはあほか!
絵本なんか見たって面白いわけねぇだろ!
もって来るなら…そうだ!エロ本を持って来い!」

「……エロ本?」

カパエルに着いて来ていた衛兵がわざとらしい咳払いをする。



「ちぇっ…
おまえの顔なんて見てても仕方がねぇ。
ボインボインのかわいこちゃんを…」

衛兵の咳払いがなおさら大きくなった。



「あぁ、つまんねぇ!」

ミカエルは腹立たしげに壁を拳で叩いた。



「ミカエル、これ、良かったら…」

「なんだそりゃ…」

それはカパエルのフィギュアだった。
カパエルがまだカッパだった時に作られたものだ。



「これを僕だと思って持ってて…
そしたら、寂しくないでしょ?」

「おまえは本当にあほだな!
そんなもんもらったって……」

カパエルの差し出したフィギュアを見つめるうちに、ミカエルの脳裏にある悪巧みが浮かんだ。 
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