ラッキーアイテムお題短編集６

携帯用ゲーム機（しし座）

１

「じゃ、俺、帰るから…」



「お疲れ様です！」

若い男達が立ち上がり、剣に向かって頭を下げた。




＊



「おい…最近の剣さん、やっぱりおかしいと思わないか？」

「そうだな…やけに元気がなさ過ぎる…」

「体調が悪いようではないんだけどなぁ…」



最近の剣の異変には、店の者達もみな気付いていた。
ホストという職業柄、店ではそんな様子は微塵も見せないが、店が終わるとその態度は途端に変わる。
皆と話すこともせずさっさと家に帰りたがるし、どこか遠くを見て、溜め息を吐いていることもあった。
そんな剣の様子を心配しながらも、その原因については誰も知るものはいなかった。



「そういえば、リュウがさっき言ってたんだけど…
剣さん、もしかしたら好きな女がいるんじゃないかって…」

「好きな女って…まさか、本気ってことか！？」

「そういうことだな。」




「えーーーーーーっっ！」



No.1ホスト・冴神剣は、ホストでいる間は個人的な恋はしないと公言してはばからない。
つまり、剣がつきあう相手は、あくまでもホストである剣の相手だということだ。
それを「遊び」だとは言わなかったが、本気でないことは周りの誰もが知っていた。
そんな剣に好きな女が出来たのだとしたら、それは大ニュースだ。



「剣さんを本気にさせた女って誰なんだよ！」

「店に来てる奴か！？」

「俺は知らないよ。
リュウにちょっと聞いただけだから。」

「リュウに？じゃあ、リュウを呼び出そうぜ！」



＊



「あの…剣さん、ちょっと出てきて構いませんか？」

リュウはドアをノックし、剣の部屋の外から声をかけた。



「あぁ…気を付けてな。」

剣は扉を開けることなく、短くそう答えただけだった。



「じゃ……」

その時、リュウの耳に剣の切ない囁き声が聞こえた。