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駄菓子(かに座)
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「これだけあれば十分だろ。
他になにか…あれ?
……美幸?」
俺は、美幸のバイトが終わるのを待って、出先から一緒に帰ることにした。
ついでに、食料を中心にちょっとしたものを買い物し、いざ、帰ろうと思ったら、さっきまで傍にいた筈の美幸の姿が見えなくなっていた。
どこに行ったのかとあたりを見渡していると、どこからか美幸が出て来て俺に向かって大きく手を振った。
「兄さ~ん、こっち、こっち!」
こんなに荷物があるっていうのに、まだ何か買わせるつもりか…
小さな溜め息を吐きながらも、俺は両手に大きなレジ袋を下げ、美幸の所へ向かった。
「ほら、見て!兄さん!」
美幸が俺を連れて行ったのは、一軒の新しい店の前だった。
「いつ出来たんだろう…
全然気付かなかった!」
美幸が目を輝かせるその店は、駄菓子屋だった。
昔と比べるとずっと垢抜けていて、容器等も今風のものではあったが、売られている商品は俺がまだ小さな頃にあったものばかりだ。
客の中には大人も多く、子供に買って帰るためというよりは、どこか嬉しそうなその顔は懐かしくて買っているように感じられた。
美幸も、早速、小さなかごを持って、駄菓子を選び始めた。
母さんは、ああいうものは身体にも良くないと言って美幸にはあまり買わせなかった。
だけど、美幸は高級な菓子よりも駄菓子が好きで、それを知ってた俺は、ある時、母さんに隠れて美幸を駄菓子屋に連れて行った。
「かずくん、駄菓子屋さんに行こうよ!」
美幸はそれ以来、すっかり味をしめて、俺が帰ってくるのを近くの公園で待っているようになった。
美幸の小さな手を引いて、俺はそのまま駄菓子屋に向かう。
駄菓子を選ぶ美幸を見ていると、俺には、目の前にいる美幸とあの頃の小さな美幸が重なって見えた。
「兄さん!くじびきがあるよ!」
そう…俺はあの頃はすでに駄菓子にはさほど興味がなかったのだが、美幸はどうもくじ運が悪くていつもスカばかりだったから、俺に任せろとばかりにくじをひいていた。
当たると美幸はとても喜んでくれたから、俺も調子に乗って、くじを見るとムキになってひいてた記憶がある。
「……よし…久し振りにひいてみるか…」
ミルクパンのくじをひいた。
「わぁ!二等だ!
すご~い!」
二等はミルクパンが三枚もらえるようだ。
こんなつまらないことに、美幸はやっぱり喜んでくれた。
年はもうじき19になり、身体も大きくなって、俺のことも「かずくん」ではなく「兄さん」と呼ぶようになったけど…
やっぱり、美幸はあの頃となんら変わってはいない…
そんな妹に愛しさと一抹の不安を感じながら、俺はまだ買い物をやめない美幸をそっとみつめた。
他になにか…あれ?
……美幸?」
俺は、美幸のバイトが終わるのを待って、出先から一緒に帰ることにした。
ついでに、食料を中心にちょっとしたものを買い物し、いざ、帰ろうと思ったら、さっきまで傍にいた筈の美幸の姿が見えなくなっていた。
どこに行ったのかとあたりを見渡していると、どこからか美幸が出て来て俺に向かって大きく手を振った。
「兄さ~ん、こっち、こっち!」
こんなに荷物があるっていうのに、まだ何か買わせるつもりか…
小さな溜め息を吐きながらも、俺は両手に大きなレジ袋を下げ、美幸の所へ向かった。
「ほら、見て!兄さん!」
美幸が俺を連れて行ったのは、一軒の新しい店の前だった。
「いつ出来たんだろう…
全然気付かなかった!」
美幸が目を輝かせるその店は、駄菓子屋だった。
昔と比べるとずっと垢抜けていて、容器等も今風のものではあったが、売られている商品は俺がまだ小さな頃にあったものばかりだ。
客の中には大人も多く、子供に買って帰るためというよりは、どこか嬉しそうなその顔は懐かしくて買っているように感じられた。
美幸も、早速、小さなかごを持って、駄菓子を選び始めた。
母さんは、ああいうものは身体にも良くないと言って美幸にはあまり買わせなかった。
だけど、美幸は高級な菓子よりも駄菓子が好きで、それを知ってた俺は、ある時、母さんに隠れて美幸を駄菓子屋に連れて行った。
「かずくん、駄菓子屋さんに行こうよ!」
美幸はそれ以来、すっかり味をしめて、俺が帰ってくるのを近くの公園で待っているようになった。
美幸の小さな手を引いて、俺はそのまま駄菓子屋に向かう。
駄菓子を選ぶ美幸を見ていると、俺には、目の前にいる美幸とあの頃の小さな美幸が重なって見えた。
「兄さん!くじびきがあるよ!」
そう…俺はあの頃はすでに駄菓子にはさほど興味がなかったのだが、美幸はどうもくじ運が悪くていつもスカばかりだったから、俺に任せろとばかりにくじをひいていた。
当たると美幸はとても喜んでくれたから、俺も調子に乗って、くじを見るとムキになってひいてた記憶がある。
「……よし…久し振りにひいてみるか…」
ミルクパンのくじをひいた。
「わぁ!二等だ!
すご~い!」
二等はミルクパンが三枚もらえるようだ。
こんなつまらないことに、美幸はやっぱり喜んでくれた。
年はもうじき19になり、身体も大きくなって、俺のことも「かずくん」ではなく「兄さん」と呼ぶようになったけど…
やっぱり、美幸はあの頃となんら変わってはいない…
そんな妹に愛しさと一抹の不安を感じながら、俺はまだ買い物をやめない美幸をそっとみつめた。
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