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「どういうことなんだよ、姉さん!」
「お止し、小枝子!
父さんと約束しただろ!」
「いやよ!
父さんはもう死んだんだもの!
約束なんて関係ないわ!」
「……何のことを言ってるんだ…
約束って何のことなんだよ…!」
姉は、高ぶる感情に声を震わせながら、意外なことを話し始めた。
それは、僕がまだ中学生の頃の話に遡る…
「あんたが中二の時、台風が来たの覚えてる?」
「え…あぁ、覚えてるよ。」
「あの時、うちの畑が全滅したの知ってるでしょ?」
「でも、すぐに……」
そうあの台風で、出荷を控えていた僕のうちの花畑は壊滅状態になったが、父はすぐにまた立て直した。
「あの時、父さんは多額の借金をしたんだよ。
そして、その時に父さんは決心したんだ。」
母さんがぽつりと呟いた。
「決心って…何を……」
「父さんはあんたと一緒に花を作るのが夢だったんだけど、あんたは小さい頃身体があまり丈夫じゃなかった。
それに、私達の息子にしては信じられない程頭が良かったから、先生からもこんな田舎の学校じゃなくて都会で良い教育を受けさせた方が良いって言われてたんだよ。
それでも、父さんはまだ決めかねてたんだ。
でも…あの台風で借金を抱えることになってから、父さんはあんたに苦労をかけさせたくないと、一緒に花を作る夢を諦め、あんたを都会に行かせることを決心したんだよ。」
「そ…そんな…嘘だ。
父さんは、あの時も設備をたて直すくらいの蓄えはあるって言ってたし、それに…
おまえみたいな体力のない奴に、俺の後は継がせられない。
そんな役立たずは家から出ていけって酷いことを言って…」
「そうでも言わなきゃ、父さんはあんたを手放せなかったんだよ…」
母さんはそう言って、ハンカチで口元を押さえ俯いた。
「あんたへの仕送りのために、父さんはどんだけ働いたかわからないんだよ。
母さんもあの時は町に働きに行ってたし、私だってほしいものもなにも買ってもらえなかった。
父さんはいつもあんたのことを一番に考えて…私、あの頃は本当にあんたのことを恨んでたから。」
まるで、なにかで頭をがつんと殴られたような感じがした。
自分の知らない所で、そんなことがあったなんて…
僕はそんなことには全く気付いていなかった。
「お止し、小枝子!
父さんと約束しただろ!」
「いやよ!
父さんはもう死んだんだもの!
約束なんて関係ないわ!」
「……何のことを言ってるんだ…
約束って何のことなんだよ…!」
姉は、高ぶる感情に声を震わせながら、意外なことを話し始めた。
それは、僕がまだ中学生の頃の話に遡る…
「あんたが中二の時、台風が来たの覚えてる?」
「え…あぁ、覚えてるよ。」
「あの時、うちの畑が全滅したの知ってるでしょ?」
「でも、すぐに……」
そうあの台風で、出荷を控えていた僕のうちの花畑は壊滅状態になったが、父はすぐにまた立て直した。
「あの時、父さんは多額の借金をしたんだよ。
そして、その時に父さんは決心したんだ。」
母さんがぽつりと呟いた。
「決心って…何を……」
「父さんはあんたと一緒に花を作るのが夢だったんだけど、あんたは小さい頃身体があまり丈夫じゃなかった。
それに、私達の息子にしては信じられない程頭が良かったから、先生からもこんな田舎の学校じゃなくて都会で良い教育を受けさせた方が良いって言われてたんだよ。
それでも、父さんはまだ決めかねてたんだ。
でも…あの台風で借金を抱えることになってから、父さんはあんたに苦労をかけさせたくないと、一緒に花を作る夢を諦め、あんたを都会に行かせることを決心したんだよ。」
「そ…そんな…嘘だ。
父さんは、あの時も設備をたて直すくらいの蓄えはあるって言ってたし、それに…
おまえみたいな体力のない奴に、俺の後は継がせられない。
そんな役立たずは家から出ていけって酷いことを言って…」
「そうでも言わなきゃ、父さんはあんたを手放せなかったんだよ…」
母さんはそう言って、ハンカチで口元を押さえ俯いた。
「あんたへの仕送りのために、父さんはどんだけ働いたかわからないんだよ。
母さんもあの時は町に働きに行ってたし、私だってほしいものもなにも買ってもらえなかった。
父さんはいつもあんたのことを一番に考えて…私、あの頃は本当にあんたのことを恨んでたから。」
まるで、なにかで頭をがつんと殴られたような感じがした。
自分の知らない所で、そんなことがあったなんて…
僕はそんなことには全く気付いていなかった。
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