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(なぜ…
僕は、死んだはずなのに、どうしてこんな所へ?
一体、なにがどうなっている?
これもすべてはまやかしなのか?)
僕は頭が混乱し、何がどうなっているのかわからず、病室の外で長椅子に腰かけていた。
その間にも、母や親戚達は忙しく動き回り、しばらくすると追いたてられるようにして僕達は父の亡骸と共に病院を追い出された。
実家に父が運び込まれると、すぐに葬儀屋がやって来て、母や姉が応対しているのを見ながら、僕は腑抜けのように父の柩の前でただ呆然と座り込んでいるだけだった。
(もしかしたら、これも夢なのか?)
父とは、僕が成人式の時に少し顔を合わせただけで、後はずっと会ってなかった。
十年も経てば、人の風貌は変わる。
だけど、父はどこかですれ違ったとしても気付かない程、痩せてやつれて…
まだ還暦を少し過ぎたばかりだというのに、老人にしか見えない程、急激に年をとっていた。
(そうだ…
きっと、これは夢なんだ…
僕は、夢を見ているんだ。)
しかし、その悪夢は一向に覚める気配はなく…
通夜が過ぎ、葬儀が済み…父が白い骨となっても、その夢が覚める事はなかった。
*
*
*
「達也、本当にありがとう。
何日も会社を休ませて悪かったね。
おかげで、やっと落ちついたから、明日はもうお帰り。」
「父さん、本当に嬉しそうだったね…
あんなこと言っても、やっぱり、父さんは達也に会いたくてたまらなかったんだね。」
「当たり前よ…
父さんは、達也のことが可愛くて仕方がなかったんだもの…」
母さんのなにげないその一言が、僕をかっとさせた。
「僕のことが可愛いだって!?
あれほど僕を嫌い、避けてたくせに!」
僕は今まで心の奥底にぐっと押さえこんでいた感情が一気に噴き出したのを感じた。
親だって、子供との相性みたいなものはある。
きっと、僕と父さんは相性が悪かったんだ。
そうでなくとも、僕は父さんの期待に添えなかったから嫌われるのは仕方のないことなんだ。
そう思って…いや、自分にそう言い聞かせて僕は父のことを恨まないように生きて来た。
僕は十五の時に一人家を追い出され、遠くの高校に通った。
大学も、それから先、社会人になっても僕はいつも一人ぼっちだった。
父はたまに僕が戻ってもあまり良い顔はしなかった。
だから、だんだんと実家には戻らなくなった。
子供の頃はあんなに優しい父だったのに…
「あんた…やっぱり、なにも気付いちゃいなかったんだね…」
姉がそう言って僕を憐れむような瞳でみつめた。
僕は、死んだはずなのに、どうしてこんな所へ?
一体、なにがどうなっている?
これもすべてはまやかしなのか?)
僕は頭が混乱し、何がどうなっているのかわからず、病室の外で長椅子に腰かけていた。
その間にも、母や親戚達は忙しく動き回り、しばらくすると追いたてられるようにして僕達は父の亡骸と共に病院を追い出された。
実家に父が運び込まれると、すぐに葬儀屋がやって来て、母や姉が応対しているのを見ながら、僕は腑抜けのように父の柩の前でただ呆然と座り込んでいるだけだった。
(もしかしたら、これも夢なのか?)
父とは、僕が成人式の時に少し顔を合わせただけで、後はずっと会ってなかった。
十年も経てば、人の風貌は変わる。
だけど、父はどこかですれ違ったとしても気付かない程、痩せてやつれて…
まだ還暦を少し過ぎたばかりだというのに、老人にしか見えない程、急激に年をとっていた。
(そうだ…
きっと、これは夢なんだ…
僕は、夢を見ているんだ。)
しかし、その悪夢は一向に覚める気配はなく…
通夜が過ぎ、葬儀が済み…父が白い骨となっても、その夢が覚める事はなかった。
*
*
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「達也、本当にありがとう。
何日も会社を休ませて悪かったね。
おかげで、やっと落ちついたから、明日はもうお帰り。」
「父さん、本当に嬉しそうだったね…
あんなこと言っても、やっぱり、父さんは達也に会いたくてたまらなかったんだね。」
「当たり前よ…
父さんは、達也のことが可愛くて仕方がなかったんだもの…」
母さんのなにげないその一言が、僕をかっとさせた。
「僕のことが可愛いだって!?
あれほど僕を嫌い、避けてたくせに!」
僕は今まで心の奥底にぐっと押さえこんでいた感情が一気に噴き出したのを感じた。
親だって、子供との相性みたいなものはある。
きっと、僕と父さんは相性が悪かったんだ。
そうでなくとも、僕は父さんの期待に添えなかったから嫌われるのは仕方のないことなんだ。
そう思って…いや、自分にそう言い聞かせて僕は父のことを恨まないように生きて来た。
僕は十五の時に一人家を追い出され、遠くの高校に通った。
大学も、それから先、社会人になっても僕はいつも一人ぼっちだった。
父はたまに僕が戻ってもあまり良い顔はしなかった。
だから、だんだんと実家には戻らなくなった。
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「あんた…やっぱり、なにも気付いちゃいなかったんだね…」
姉がそう言って僕を憐れむような瞳でみつめた。
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