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二階堂さんのビンタ事件を最後に、その後、私たちの身にはこれといった問題は何も起こらず、極めて穏やかな日々が続いた。



樹生さんの仕事は順調で、私たちの間はますます愛が育まれて行って…甘い新婚生活を満喫している。
そうそう、先月から、拓郎さんが樹生さんの会社に入った。
拓郎さんのことをちょっと話してみたら、樹生さんが一度会ってみたいって言ってくれて…
それで、拓郎さんの実力を確認した上で、デザイナーとして雇ってもらえたんだ。
お姉ちゃんも拓郎さんも大喜びだ。
私にも感謝してるって言ってくれたけど、別に私が感謝されることはない。
樹生さんは、親戚だからとか、そんなことで雇ってくれる甘い人じゃないから。
彼にとっては、能力がすべて。



「私情で雇ったのは君だけだから。」

樹生さんはそう言って笑う。



確かにそうだよね。
私は、他の人より抜きんでているような能力はなにもない。
そんな自分にずっとコンプレックスを抱いてたけど、最近はそういうのも気にならなくなった。



だって、こんなごく普通の私が良いって言ってくれる人がいるんだから。
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