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「さぁ、ミシェル…
頑張って薬を飲んで。」

「これはあなたが作ってくれたの?」

「……そうだよ。」

「嬉しいわ。あなたの作ったお薬が飲めるなんて…」



ミシェルは、俺が差し出すスプーンの薬をゆっくりと飲む。
とても苦いだろうに、文句ひとつ言うこともなく。



こんなことなら、ミシェルの症状と薬について書かれた帳面を持って来れば良かったと思った。
早速、シュミット家の使用人の男性が取りに行ってくれた。
昨日は、診療所のウェルス医師にも会って、ミシェルの病状について聞いた。
ウェルス医師は、もうミシェルには少しの希望もないと言った。
彼女に残された短い時間を、ただ、見守ってやるしかない、と。



だけど、そんなことが聞けるはずがない。
 俺は、まず、今まで出されていたきつい薬をやめた。
 彼女の痛みを和らげるものだとウェルス医師は言っていたが、あまりにも体に対するダメージが強い。
 彼女が寝てばかりいるのもそのせいだ。
 俺は、彼女の体力を取り戻すため、今までとは違う内容の薬を煎じ、そして、マッサージを施した。
少しでも血のめぐりを良くするためだ。



「ミシェル…良く頑張ったね。」

「ジョッシュ…薬を飲んだだけで頑張ったって言うのはおかしいわ。」

「そうかな?」



俺は、一日の大半をミシェルの傍で過ごした。
彼女が眠っている間も、離れる気にはなれなかった。
ミシェルがどうにかならないかと、常に心配で離れられなかったんだ。
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