1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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喫茶店にて…

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「良かったですね。」

 「はい、本当に……」



 花菖蒲園を出てしばらくするとだんだん雨が上がって来て…
バスが来る頃には、日差しまでが出る程だった。



 「なんか、すみません。
 待ち合わせのもう少し時間を遅らせてたら、雨に遭うこともなかったかもしれませんね。」

 「いえ、こういう機会はめったにありませんから。」

それは嘘というわけではなかった。
マスターとのデートなんだもの。
 雨だろうが雪だろうが、そんなことなんでもない。



 「どうしましょう。ランチには少し早いですが…」

 「そうですね…じゃあ、どこかでお茶でも…」

 駅前に着いて、喫茶店を探した。



 「あ……」

ショッピングモールを歩いていて、私の足を止めたのは変わった雰囲気のお店。
 店の前のショウウィンドウには、花が活けられていて、一瞬、何のお店かわからなかったけど、どうやら喫茶店のようだった。



 「変わったお店ですね。
ここに入ってみましょうか?」

 「ええ、そうしましょう。」

マスターが嫌がってなくて良かった。



 「いらっしゃいませ。」

 出迎えてくれたのは、和服の女性だった。
 店の中には、ちょっとしたステージのようなスペースがあり、そこには琴が置いてあった。



 「すごく和風ですね。」

 「面白いですね。」

メニューもやっぱり和のものだった。
どれにしようか悩んでいたら、ステージに女性が二人あがって、ひとりは琴の前に座り、もうひとりは椅子に座って本を開いた。
 琴の音が流れ出す。



 「何が始まるんでしょうね?」

 「歌でしょうか?」

 私も歌かと思ってたけど、始まったのは意外にも朗読だった。
 詩のようなものを読み始めた。
すごく表現力があるっていうのか、聞いてたらぐいぐい引き込まれる感じだ。
マスターも、真剣な顔でみつめている。



 朗読が終わると、大きな拍手がわき上がった。



 「いや~、素晴らしかったですね。
 朗読でこんなに感動したのは初めてですよ。
っていうか、朗読を生で聞いたこと自体、初めてなんです。」

 「私もです。言葉だけでこんなにも大きな感動を生み出せるんですね。」

マスターとは本当に気が合うというのか、同じような感性をしているのだと思ったら、嬉しかった。



 「あ…注文するの忘れてましたね。」

 「まぁ、本当に。
えっと……じゃあ、私はこのわらび餅のパフェにします。」

 「実は、僕もそれにしようと思ってたんです。
きな粉が好きなんで…」

 「わぁ、私もきな粉大好きです!」

また意見が合った。些細なことだけど、私の胸はそんなことにもドキドキとときめいた。

 
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