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喫茶店にて…
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「良かったですね。」
「はい、本当に……」
花菖蒲園を出てしばらくするとだんだん雨が上がって来て…
バスが来る頃には、日差しまでが出る程だった。
「なんか、すみません。
待ち合わせのもう少し時間を遅らせてたら、雨に遭うこともなかったかもしれませんね。」
「いえ、こういう機会はめったにありませんから。」
それは嘘というわけではなかった。
マスターとのデートなんだもの。
雨だろうが雪だろうが、そんなことなんでもない。
「どうしましょう。ランチには少し早いですが…」
「そうですね…じゃあ、どこかでお茶でも…」
駅前に着いて、喫茶店を探した。
「あ……」
ショッピングモールを歩いていて、私の足を止めたのは変わった雰囲気のお店。
店の前のショウウィンドウには、花が活けられていて、一瞬、何のお店かわからなかったけど、どうやら喫茶店のようだった。
「変わったお店ですね。
ここに入ってみましょうか?」
「ええ、そうしましょう。」
マスターが嫌がってなくて良かった。
「いらっしゃいませ。」
出迎えてくれたのは、和服の女性だった。
店の中には、ちょっとしたステージのようなスペースがあり、そこには琴が置いてあった。
「すごく和風ですね。」
「面白いですね。」
メニューもやっぱり和のものだった。
どれにしようか悩んでいたら、ステージに女性が二人あがって、ひとりは琴の前に座り、もうひとりは椅子に座って本を開いた。
琴の音が流れ出す。
「何が始まるんでしょうね?」
「歌でしょうか?」
私も歌かと思ってたけど、始まったのは意外にも朗読だった。
詩のようなものを読み始めた。
すごく表現力があるっていうのか、聞いてたらぐいぐい引き込まれる感じだ。
マスターも、真剣な顔でみつめている。
朗読が終わると、大きな拍手がわき上がった。
「いや~、素晴らしかったですね。
朗読でこんなに感動したのは初めてですよ。
っていうか、朗読を生で聞いたこと自体、初めてなんです。」
「私もです。言葉だけでこんなにも大きな感動を生み出せるんですね。」
マスターとは本当に気が合うというのか、同じような感性をしているのだと思ったら、嬉しかった。
「あ…注文するの忘れてましたね。」
「まぁ、本当に。
えっと……じゃあ、私はこのわらび餅のパフェにします。」
「実は、僕もそれにしようと思ってたんです。
きな粉が好きなんで…」
「わぁ、私もきな粉大好きです!」
また意見が合った。些細なことだけど、私の胸はそんなことにもドキドキとときめいた。
「はい、本当に……」
花菖蒲園を出てしばらくするとだんだん雨が上がって来て…
バスが来る頃には、日差しまでが出る程だった。
「なんか、すみません。
待ち合わせのもう少し時間を遅らせてたら、雨に遭うこともなかったかもしれませんね。」
「いえ、こういう機会はめったにありませんから。」
それは嘘というわけではなかった。
マスターとのデートなんだもの。
雨だろうが雪だろうが、そんなことなんでもない。
「どうしましょう。ランチには少し早いですが…」
「そうですね…じゃあ、どこかでお茶でも…」
駅前に着いて、喫茶店を探した。
「あ……」
ショッピングモールを歩いていて、私の足を止めたのは変わった雰囲気のお店。
店の前のショウウィンドウには、花が活けられていて、一瞬、何のお店かわからなかったけど、どうやら喫茶店のようだった。
「変わったお店ですね。
ここに入ってみましょうか?」
「ええ、そうしましょう。」
マスターが嫌がってなくて良かった。
「いらっしゃいませ。」
出迎えてくれたのは、和服の女性だった。
店の中には、ちょっとしたステージのようなスペースがあり、そこには琴が置いてあった。
「すごく和風ですね。」
「面白いですね。」
メニューもやっぱり和のものだった。
どれにしようか悩んでいたら、ステージに女性が二人あがって、ひとりは琴の前に座り、もうひとりは椅子に座って本を開いた。
琴の音が流れ出す。
「何が始まるんでしょうね?」
「歌でしょうか?」
私も歌かと思ってたけど、始まったのは意外にも朗読だった。
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すごく表現力があるっていうのか、聞いてたらぐいぐい引き込まれる感じだ。
マスターも、真剣な顔でみつめている。
朗読が終わると、大きな拍手がわき上がった。
「いや~、素晴らしかったですね。
朗読でこんなに感動したのは初めてですよ。
っていうか、朗読を生で聞いたこと自体、初めてなんです。」
「私もです。言葉だけでこんなにも大きな感動を生み出せるんですね。」
マスターとは本当に気が合うというのか、同じような感性をしているのだと思ったら、嬉しかった。
「あ…注文するの忘れてましたね。」
「まぁ、本当に。
えっと……じゃあ、私はこのわらび餅のパフェにします。」
「実は、僕もそれにしようと思ってたんです。
きな粉が好きなんで…」
「わぁ、私もきな粉大好きです!」
また意見が合った。些細なことだけど、私の胸はそんなことにもドキドキとときめいた。
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