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おかえり
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「茉奈、おかえり~!」
「ただいま~!」
私は数日ぶりに茉奈の体を抱き締め、何とも言えない幸せな気分に酔いしれた。
5日の夕方近くに、三人は帰って来た。
両親は少し疲れた様子だけれど、茉奈は元気いっぱいだ。
*
「あぁ、やっぱり家は落ち着くわね。」
熱いお茶をすすり、母がぽつりと呟く。
「けっこう長い旅行だったから、疲れたでしょ?」
「僕達ももう年ということかな。
まだまだ若いつもりだったんだけど、茉奈にはとても適わなかったよ。」
父がそう言って苦笑する。
「ママ、お土産いっぱいあるよ!」
「そうなの?嬉しいな!
茉奈、今日は子供の日だから、夜はちらし寿司よ。」
「わぁい!やったー!」
「なんだよ。旅行中も毎日ご馳走だっただろ。」
父はまたしても苦笑した。
夜は、みんなで子供の日を祝った。
茉奈は、いちごの乗ったケーキと私の作ったちらし寿司に大喜びだ。
料理はあまり得意じゃないけど、ちらし寿司だけはちょっと自信がある。
*
(……楽しい一日だったな。)
夜になり、茉奈の寝顔を見ながら、私はささやかな幸せを噛み締めた。
先日のことがふと頭をかすめた。
図書館の隣のカフェで、マスターと他愛ない話でとても盛り上がった。
ちょっと前には、なんだかよそよそしい雰囲気を感じてたけど、あの日は本当に打ち解けた感じで話してくれて、とても嬉しかった。
今日、もしも私の隣にマスターがいてくれたら…そんなことを考えては、切なくなった。
私は、子持ちのバツイチ女。
そんな私をマスターが相手にするはずはない。
でも、たまにお茶を飲んだり、他愛ないおしゃべりをする、友達のような関係にはなれないかな?
それすらも高望みなのかな?
私には、恋をする資格はもうないのかな?
そんなことを考えては、ちょっと落ち込んでみたり…
(さ、もう寝よっと。)
私は、茉奈の横の布団に潜り込んだ。
「ただいま~!」
私は数日ぶりに茉奈の体を抱き締め、何とも言えない幸せな気分に酔いしれた。
5日の夕方近くに、三人は帰って来た。
両親は少し疲れた様子だけれど、茉奈は元気いっぱいだ。
*
「あぁ、やっぱり家は落ち着くわね。」
熱いお茶をすすり、母がぽつりと呟く。
「けっこう長い旅行だったから、疲れたでしょ?」
「僕達ももう年ということかな。
まだまだ若いつもりだったんだけど、茉奈にはとても適わなかったよ。」
父がそう言って苦笑する。
「ママ、お土産いっぱいあるよ!」
「そうなの?嬉しいな!
茉奈、今日は子供の日だから、夜はちらし寿司よ。」
「わぁい!やったー!」
「なんだよ。旅行中も毎日ご馳走だっただろ。」
父はまたしても苦笑した。
夜は、みんなで子供の日を祝った。
茉奈は、いちごの乗ったケーキと私の作ったちらし寿司に大喜びだ。
料理はあまり得意じゃないけど、ちらし寿司だけはちょっと自信がある。
*
(……楽しい一日だったな。)
夜になり、茉奈の寝顔を見ながら、私はささやかな幸せを噛み締めた。
先日のことがふと頭をかすめた。
図書館の隣のカフェで、マスターと他愛ない話でとても盛り上がった。
ちょっと前には、なんだかよそよそしい雰囲気を感じてたけど、あの日は本当に打ち解けた感じで話してくれて、とても嬉しかった。
今日、もしも私の隣にマスターがいてくれたら…そんなことを考えては、切なくなった。
私は、子持ちのバツイチ女。
そんな私をマスターが相手にするはずはない。
でも、たまにお茶を飲んだり、他愛ないおしゃべりをする、友達のような関係にはなれないかな?
それすらも高望みなのかな?
私には、恋をする資格はもうないのかな?
そんなことを考えては、ちょっと落ち込んでみたり…
(さ、もう寝よっと。)
私は、茉奈の横の布団に潜り込んだ。
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