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二度目の偶然
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「じゃあ、行って来るからね。」
「うん、気を付けてね。」
茉奈は手を振り、タクシーに乗り込んだ。
私は、ちょっとうるっと来てるっていうのに、茉奈は少しも動揺した様子はない。
このGW、お父さんが10連休だから、旅行に行こうと言い出して…
でも、私は30日と2日が出勤だから、どうしようかと悩んだんだけど、入社早々休むのもどうかと思い、結局、行かないことにした。
旅行の費用で親に負担をかけるのも気が引けたから。
茉奈だけ行くことになったのだけど、今まで茉奈と離れたことなんてなかったから、私はかなり寂しいっていうのに、茉奈は意外な程クールだ。
「ママ、ポコたんを貸してあげる。
寂しい時は、ポコたんとお話すると良いよ。」
そう言って、茉奈はお気に入りのうさぎのぬいぐるみを置いて行ってくれた。
「ポコたん、ママはもう寂しいよ…」
旅行の初日から寂しくて仕方なかった。
特になにもすることがなくて、家でぼーっとしていると、自然とマスターのことが頭に浮かんだ。
夜桜を見に行ってから、なんだかマスターが冷たくなったような気がする。
あの時は、いろいろお話をしてとても楽しかったのに…
マスターには憧れに似た気持ちを抱いていたから、夜桜見物に誘われた時もすごく嬉しくて、もしかしたら…なんて、勝手な想像までして喜んでたら、次の日から何か態度がよそよそしくなって…
最近は、ランチに新メニューも出ないから、もしかしたら体調が悪いとか、何かトラブルでもあったんだろうかと思うと心配だし…
でも、そんなことを訊ける程、まだ親しくもないし…
*
茉奈たちが旅行に出発してもう5日目だ。
毎日、電話は来るけれど、寂しさは募るばかり…
やっぱり、仕事を休んで私も一緒に行けば良かった…そんな後悔ばかりが胸に浮かんで来る。
茉奈は少しも寂しがっていない様子だ。
毎日、旅行先での出来事を楽しそうに話してくれる。
「私も元気出さなきゃね…」
ポコたんをバッグに入れ、私はあてもないまま家を後にした。
バスに乗って、近くのショッピングセンターに行き、ウィンドウショッピングをして、一人でお茶を飲んで…
「あ、そうだ。図書館に行こう!」
茉奈が読みたいって言ってた本が、本屋さんにはなかったから、探してみようと思ったのだ。
何年か前に行ったことがあるから迷いはしなかった。
「あ!」
「あっ!」
図書館に入った途端、私は思いがけない人と出会った。
マスターだ。
「こ、こんにちは。」
「あ、ど、どうも。」
寂しかったせいか、マスターに偶然会ったことが嬉しくてたまらなかった。
さながら、私は、ちぎれる程尻尾を振る小犬みたいだ。
「あの……良かったら、お茶でも飲みませんか?」
言ってしまった後で、私は急に恥ずかしくなった。
会って早々、何を言ってるんだろう。
マスターも戸惑ってるのか、すぐには返事をくれなかった。
「……そうですね。
でも、本は良いんですか?」
「は、はい。良いんです。」
「じゃあ、行きましょうか。」
私達は、図書館に隣接する喫茶店に向かった。
「うん、気を付けてね。」
茉奈は手を振り、タクシーに乗り込んだ。
私は、ちょっとうるっと来てるっていうのに、茉奈は少しも動揺した様子はない。
このGW、お父さんが10連休だから、旅行に行こうと言い出して…
でも、私は30日と2日が出勤だから、どうしようかと悩んだんだけど、入社早々休むのもどうかと思い、結局、行かないことにした。
旅行の費用で親に負担をかけるのも気が引けたから。
茉奈だけ行くことになったのだけど、今まで茉奈と離れたことなんてなかったから、私はかなり寂しいっていうのに、茉奈は意外な程クールだ。
「ママ、ポコたんを貸してあげる。
寂しい時は、ポコたんとお話すると良いよ。」
そう言って、茉奈はお気に入りのうさぎのぬいぐるみを置いて行ってくれた。
「ポコたん、ママはもう寂しいよ…」
旅行の初日から寂しくて仕方なかった。
特になにもすることがなくて、家でぼーっとしていると、自然とマスターのことが頭に浮かんだ。
夜桜を見に行ってから、なんだかマスターが冷たくなったような気がする。
あの時は、いろいろお話をしてとても楽しかったのに…
マスターには憧れに似た気持ちを抱いていたから、夜桜見物に誘われた時もすごく嬉しくて、もしかしたら…なんて、勝手な想像までして喜んでたら、次の日から何か態度がよそよそしくなって…
最近は、ランチに新メニューも出ないから、もしかしたら体調が悪いとか、何かトラブルでもあったんだろうかと思うと心配だし…
でも、そんなことを訊ける程、まだ親しくもないし…
*
茉奈たちが旅行に出発してもう5日目だ。
毎日、電話は来るけれど、寂しさは募るばかり…
やっぱり、仕事を休んで私も一緒に行けば良かった…そんな後悔ばかりが胸に浮かんで来る。
茉奈は少しも寂しがっていない様子だ。
毎日、旅行先での出来事を楽しそうに話してくれる。
「私も元気出さなきゃね…」
ポコたんをバッグに入れ、私はあてもないまま家を後にした。
バスに乗って、近くのショッピングセンターに行き、ウィンドウショッピングをして、一人でお茶を飲んで…
「あ、そうだ。図書館に行こう!」
茉奈が読みたいって言ってた本が、本屋さんにはなかったから、探してみようと思ったのだ。
何年か前に行ったことがあるから迷いはしなかった。
「あ!」
「あっ!」
図書館に入った途端、私は思いがけない人と出会った。
マスターだ。
「こ、こんにちは。」
「あ、ど、どうも。」
寂しかったせいか、マスターに偶然会ったことが嬉しくてたまらなかった。
さながら、私は、ちぎれる程尻尾を振る小犬みたいだ。
「あの……良かったら、お茶でも飲みませんか?」
言ってしまった後で、私は急に恥ずかしくなった。
会って早々、何を言ってるんだろう。
マスターも戸惑ってるのか、すぐには返事をくれなかった。
「……そうですね。
でも、本は良いんですか?」
「は、はい。良いんです。」
「じゃあ、行きましょうか。」
私達は、図書館に隣接する喫茶店に向かった。
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