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君が読んでくれるから
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「良いよ!すっごく良い!
二人の純粋さにめちゃめちゃ感動した…!」
「……そう?本当に?」
「うん!やっぱりシゲちゃんは、最高の作家だよ!」
赤い目をした里穂が、派手な音で鼻をすすった。
*
五年前の今頃…僕は初めての体験をした。
『一目惚れ』という体験を。
社食で、白衣を着てかいがいしく働く君は、明るく元気でまるで夏の向日葵のようだった。
君が眩し過ぎて、僕は苦しい程、胸が高鳴るのを感じた。
毎日君に会う度に、僕は君に惹かれて行った。
それは僕だけじゃなかったらしく、何人もの社員が君に声をかけていた。
僕は口下手だから、気軽に声をかけることなんて出来なくて、もどかしい想いが募るばかりだった。
ある時、僕は手紙を書いた。
僕の心をありのままに、便せんに書き連ねた。
手紙を渡したその晩は、眠ることが出来なかった。
今時、恋文だなんて、時代錯誤も甚だしい。
きっとおかしな奴だと思われたはずだ。
手紙を渡したことを酷く悔やんだ。
次の日は、会社を休もうかと思ったくらいだったけど、そういうわけにもいかない。
さすがに社食には行けずに、僕は近くの定食屋で昼ご飯を済ませた。
退社時間になり、外に出たら…
君がいた。
見慣れた白衣とは違い、若い女性らしい服装をした君はいつもにも増して綺麗に見えた。
気まずさに目を逸らし、急いで立ち去ろうとした僕を、君は呼び止めた。
そして、可愛らしいうさぎの柄に封筒を、僕の前に差し出したんだ。
僕は、半ばパニックになっていて、その手紙をひったくるようにして君の前から走り去った。
便せんには、僕の手紙が嬉しかったと書いてあった。
『文面からあなたのお人柄が伝わって来るようでした。』
そんなことが書いてあった。
その後、何度かの手紙の交換を経て、僕たちは自然と付き合うようになった。
僕達の付き合いはとても順調で、一年後には結婚した。
そんな時、僕の母が体調を崩した。
こっちへ連れて来ようと思ったのだけれど、母は故郷を離れることを嫌がった。
仕方なく、僕達が田舎へ行ったのだけど、田舎には僕に合う仕事がなかった。
どうしたものかと悩んでいる時、里穂が唐突に雑誌を広げた。
「ねぇ、これに応募してみたら?」
それは、小説コンテストの公募だった。
僕は小説なんて書いたことはない。
とても無理だと思ったけれど、里穂に強く背中を押され、僕と里穂のなれそめを小説風に書いた。
書く度にその時のことが鮮明に思い出され、僕は小説を書く楽しさにのめりこんでいった。
やがて、数か月後…僕と里穂の恋物語は完成した。
里穂はその小説を手放しにほめてくれた。
気が付けば、僕は文章を書くことの魅力に憑りつかれていた。
僕の処女作がコンテストの優秀賞を取り、僕はとんとん拍子に小説家の仲間入りを果たした。
小説家になりたかったわけじゃない。
ただ、僕は文章を書く楽しさを里穂によって知り…里穂がほめてくれることが嬉しかっただけだ。
これからも僕は小説を書くだろう。
僕と里穂の楽しみのために…
二人の純粋さにめちゃめちゃ感動した…!」
「……そう?本当に?」
「うん!やっぱりシゲちゃんは、最高の作家だよ!」
赤い目をした里穂が、派手な音で鼻をすすった。
*
五年前の今頃…僕は初めての体験をした。
『一目惚れ』という体験を。
社食で、白衣を着てかいがいしく働く君は、明るく元気でまるで夏の向日葵のようだった。
君が眩し過ぎて、僕は苦しい程、胸が高鳴るのを感じた。
毎日君に会う度に、僕は君に惹かれて行った。
それは僕だけじゃなかったらしく、何人もの社員が君に声をかけていた。
僕は口下手だから、気軽に声をかけることなんて出来なくて、もどかしい想いが募るばかりだった。
ある時、僕は手紙を書いた。
僕の心をありのままに、便せんに書き連ねた。
手紙を渡したその晩は、眠ることが出来なかった。
今時、恋文だなんて、時代錯誤も甚だしい。
きっとおかしな奴だと思われたはずだ。
手紙を渡したことを酷く悔やんだ。
次の日は、会社を休もうかと思ったくらいだったけど、そういうわけにもいかない。
さすがに社食には行けずに、僕は近くの定食屋で昼ご飯を済ませた。
退社時間になり、外に出たら…
君がいた。
見慣れた白衣とは違い、若い女性らしい服装をした君はいつもにも増して綺麗に見えた。
気まずさに目を逸らし、急いで立ち去ろうとした僕を、君は呼び止めた。
そして、可愛らしいうさぎの柄に封筒を、僕の前に差し出したんだ。
僕は、半ばパニックになっていて、その手紙をひったくるようにして君の前から走り去った。
便せんには、僕の手紙が嬉しかったと書いてあった。
『文面からあなたのお人柄が伝わって来るようでした。』
そんなことが書いてあった。
その後、何度かの手紙の交換を経て、僕たちは自然と付き合うようになった。
僕達の付き合いはとても順調で、一年後には結婚した。
そんな時、僕の母が体調を崩した。
こっちへ連れて来ようと思ったのだけれど、母は故郷を離れることを嫌がった。
仕方なく、僕達が田舎へ行ったのだけど、田舎には僕に合う仕事がなかった。
どうしたものかと悩んでいる時、里穂が唐突に雑誌を広げた。
「ねぇ、これに応募してみたら?」
それは、小説コンテストの公募だった。
僕は小説なんて書いたことはない。
とても無理だと思ったけれど、里穂に強く背中を押され、僕と里穂のなれそめを小説風に書いた。
書く度にその時のことが鮮明に思い出され、僕は小説を書く楽しさにのめりこんでいった。
やがて、数か月後…僕と里穂の恋物語は完成した。
里穂はその小説を手放しにほめてくれた。
気が付けば、僕は文章を書くことの魅力に憑りつかれていた。
僕の処女作がコンテストの優秀賞を取り、僕はとんとん拍子に小説家の仲間入りを果たした。
小説家になりたかったわけじゃない。
ただ、僕は文章を書く楽しさを里穂によって知り…里穂がほめてくれることが嬉しかっただけだ。
これからも僕は小説を書くだろう。
僕と里穂の楽しみのために…
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