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三連敗
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「くっそー!なんでないんだよ!」
俺は、時計を気にしながら、駅への道を走り抜けた。
今日は、のど自慢大会の予選の日だ。
だが、仕事の都合で遅くなってしまった。
大慌てで会社を飛び出て来たのは良いが、その際になんとスマホを忘れて来てしまった。
会場に電話して、今向かってるから何とか出させてほしいと連絡したいのだが、公衆電話がどこにもない。
最近は、スマホばかり使っていたから、公衆電話のことなんて気にも留めたことはなかったが、まさかこんなにも少なくなってるなんて…
あぁ、全くなんてことだ。
俺は、何が何でも今日の予選会には行かなくてはならない。
なんせ、俺のこれから一月の運命がかかっているのだから。
「おい、来月、県内ののど自慢大会があるの知ってるか?」
「へえ、そうなのか?」
「お前は確かに歌はうまい。それは認める。
でも、のど自慢大会の予選は無理だ。
県内にはうまい奴はごまんといるからな。」
「なんだと?予選くらいなら、俺は通る自信がある。」
「それを過信って言うんだよ。……なんなら賭けるか?」
「おうよ!受けて立とうじゃないか!」
俺には自信があった。
全国とまでいったら難しいかもしれないが、県内の予選くらいなら絶対に通る!
しかも、このところは俺の二連敗だし、この賭けでなんとしても雅樹に勝ちたいんだ!
幼馴染の雅樹と俺は、子供の頃から仲良しで…
大人になった今でもしょっちゅう会う仲だ。
なんというか、あいつとは好きなものが似てるんだよな。
子供の頃の戦隊ものに始まり、大人になってからは酒と賭け事だ。
賭け事とはいっても、たいしたもんじゃない。
俺とあいつの賭けの対象は、酒だ。
負けた方が一か月の飲み代を払うんだ。
でも、俺も雅樹も酒飲みだから、あなどれない金額になってしまう。
今度こそは、あいつに勝たなければ!
電車に乗り込み、俺は時計を見て焦っていた。
間に合うだろうか?
間に合わなかったら、今回の賭けはなし!…なんてことにはならないよな。
予選に通らない限り、俺の負けだ。
(やった!)
幸いなことに、俺はなんとか予選に間に合うことが出来た。
「では、次…〇〇市からお越しの北村浩二さん。」
「は、はいっ!」
イントロが流れ始めた時…
「浩二、頑張れよ!」
雅樹だった。
わざわざ、来てくれたのか…なんだか妙に照れ臭い。
うまく歌えた。
人は多かったけど、あがることもなく、とても良い気分で歌えた。
***
「畜生…!」
「だから、言っただろ?」
残念なことに、予選は通過出来なかった。
審査員の馬鹿野郎!
こんなことなら、予選に間に合わない方がまだ良かったかもしれない。
早速、その晩から、俺は雅樹に酒をおごる羽目になってしまった。
俺は、時計を気にしながら、駅への道を走り抜けた。
今日は、のど自慢大会の予選の日だ。
だが、仕事の都合で遅くなってしまった。
大慌てで会社を飛び出て来たのは良いが、その際になんとスマホを忘れて来てしまった。
会場に電話して、今向かってるから何とか出させてほしいと連絡したいのだが、公衆電話がどこにもない。
最近は、スマホばかり使っていたから、公衆電話のことなんて気にも留めたことはなかったが、まさかこんなにも少なくなってるなんて…
あぁ、全くなんてことだ。
俺は、何が何でも今日の予選会には行かなくてはならない。
なんせ、俺のこれから一月の運命がかかっているのだから。
「おい、来月、県内ののど自慢大会があるの知ってるか?」
「へえ、そうなのか?」
「お前は確かに歌はうまい。それは認める。
でも、のど自慢大会の予選は無理だ。
県内にはうまい奴はごまんといるからな。」
「なんだと?予選くらいなら、俺は通る自信がある。」
「それを過信って言うんだよ。……なんなら賭けるか?」
「おうよ!受けて立とうじゃないか!」
俺には自信があった。
全国とまでいったら難しいかもしれないが、県内の予選くらいなら絶対に通る!
しかも、このところは俺の二連敗だし、この賭けでなんとしても雅樹に勝ちたいんだ!
幼馴染の雅樹と俺は、子供の頃から仲良しで…
大人になった今でもしょっちゅう会う仲だ。
なんというか、あいつとは好きなものが似てるんだよな。
子供の頃の戦隊ものに始まり、大人になってからは酒と賭け事だ。
賭け事とはいっても、たいしたもんじゃない。
俺とあいつの賭けの対象は、酒だ。
負けた方が一か月の飲み代を払うんだ。
でも、俺も雅樹も酒飲みだから、あなどれない金額になってしまう。
今度こそは、あいつに勝たなければ!
電車に乗り込み、俺は時計を見て焦っていた。
間に合うだろうか?
間に合わなかったら、今回の賭けはなし!…なんてことにはならないよな。
予選に通らない限り、俺の負けだ。
(やった!)
幸いなことに、俺はなんとか予選に間に合うことが出来た。
「では、次…〇〇市からお越しの北村浩二さん。」
「は、はいっ!」
イントロが流れ始めた時…
「浩二、頑張れよ!」
雅樹だった。
わざわざ、来てくれたのか…なんだか妙に照れ臭い。
うまく歌えた。
人は多かったけど、あがることもなく、とても良い気分で歌えた。
***
「畜生…!」
「だから、言っただろ?」
残念なことに、予選は通過出来なかった。
審査員の馬鹿野郎!
こんなことなら、予選に間に合わない方がまだ良かったかもしれない。
早速、その晩から、俺は雅樹に酒をおごる羽目になってしまった。
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