1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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良い年

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(なんだか、嘘みたい……)



 気が付けば、いつの間にかもう12月に入っていた。
つまり、今年もあと一か月を切ったということだ。
 振り返ってみれば、今年は良いことも悪いこともない…よく言えば、平穏な年だった。
そんなだから、特に頑張ったようなことも何もない。



 仕事は、元々、やりがいなんて感じたこともない。
ただ食べていくために働いているだけ。
 恋愛も、ここ三年は彼氏がいない。
そして、いなくても特に寂しいとも思わなくなっていた。



 趣味の創作も、どうもぱっとしない。
スランプとまではいわないものの、どうも集中出来なくて、気が向いた時に少し書くだけ。
 以前みたいに、書く手が止まらないなんてことはなくなったことがどうにも寂しい。



そんな時…私は、みつけてしまったのだ。
あるサイトで開催されていた恋愛小説コンテストを。
 最低文字数が10万文字、未公開の新作限定…そして、締め切りは12月31日の午後11時59分。



それを見た時、私の中で何かが熱く燃え上がった。
 恋愛ものは私が一番得意とするジャンルだ。
 今からだと、1日に3000文字ちょっと書けば、何とか締め切りには間に合う。



 (やってやろうじゃないの!)



その日から、私はコンテスト用の小説に取り掛かった。
 頭の中にぼんやりとあったネタを書くことにした。
 地味でドジな女の子が、イケメンの御曹司と恋をして変わっていく、所謂、シンデレラストーリーだ。
 恋愛ものならいくらでもアイディアは出て来るけど、今まではそれを小説化する気力がなかった。
またいつか時間のある時に書こうと思うと、なかなか書けなかったのだけど、締め切りがあるととても集中出来た。



この分なら楽勝。
……そう思ってたけど、まさかのインフルにかかって、一週間寝込んでしまった。
その後も、残業があったり忘年会があったり…
まさに時間との戦いとなった。



 仕事が休みになって、ようやく書けると思ったら、友達に呼び出されたり、長電話がかかってきたり…
そして、いつの間にやら締め切りの当日となっていた。
もう9割は書けたけど、完結は出来てない。
 私は時計を気にしながら、必死に書いた。
なにがなんでも完結させなければ!
 頭の中には、それしかなかった。



 気付けば、締め切りまであと10分しかない!
ここまで来て諦めることなんて絶対に出来ない。
 私は必死に書き続けた。



 (出来た!!)



 完結ボタンを押したのは、11時58分だった。



 (や、やったーーー!)



こたつにごろんとひっくり返る。
 疲れよりも心地良い達成感の方が強かった。
テレビからは、新年の挨拶が聞こえた。



 今年…いや、去年は、ついさっきまでのスリリングな執筆のおかげで、充実した年だったと思えるようになった。



 (良い気分…今年はなんだか良い年になりそうだな…)



 ~Fin.

 
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