286 / 401
良い年
1
しおりを挟む
(なんだか、嘘みたい……)
気が付けば、いつの間にかもう12月に入っていた。
つまり、今年もあと一か月を切ったということだ。
振り返ってみれば、今年は良いことも悪いこともない…よく言えば、平穏な年だった。
そんなだから、特に頑張ったようなことも何もない。
仕事は、元々、やりがいなんて感じたこともない。
ただ食べていくために働いているだけ。
恋愛も、ここ三年は彼氏がいない。
そして、いなくても特に寂しいとも思わなくなっていた。
趣味の創作も、どうもぱっとしない。
スランプとまではいわないものの、どうも集中出来なくて、気が向いた時に少し書くだけ。
以前みたいに、書く手が止まらないなんてことはなくなったことがどうにも寂しい。
そんな時…私は、みつけてしまったのだ。
あるサイトで開催されていた恋愛小説コンテストを。
最低文字数が10万文字、未公開の新作限定…そして、締め切りは12月31日の午後11時59分。
それを見た時、私の中で何かが熱く燃え上がった。
恋愛ものは私が一番得意とするジャンルだ。
今からだと、1日に3000文字ちょっと書けば、何とか締め切りには間に合う。
(やってやろうじゃないの!)
その日から、私はコンテスト用の小説に取り掛かった。
頭の中にぼんやりとあったネタを書くことにした。
地味でドジな女の子が、イケメンの御曹司と恋をして変わっていく、所謂、シンデレラストーリーだ。
恋愛ものならいくらでもアイディアは出て来るけど、今まではそれを小説化する気力がなかった。
またいつか時間のある時に書こうと思うと、なかなか書けなかったのだけど、締め切りがあるととても集中出来た。
この分なら楽勝。
……そう思ってたけど、まさかのインフルにかかって、一週間寝込んでしまった。
その後も、残業があったり忘年会があったり…
まさに時間との戦いとなった。
仕事が休みになって、ようやく書けると思ったら、友達に呼び出されたり、長電話がかかってきたり…
そして、いつの間にやら締め切りの当日となっていた。
もう9割は書けたけど、完結は出来てない。
私は時計を気にしながら、必死に書いた。
なにがなんでも完結させなければ!
頭の中には、それしかなかった。
気付けば、締め切りまであと10分しかない!
ここまで来て諦めることなんて絶対に出来ない。
私は必死に書き続けた。
(出来た!!)
完結ボタンを押したのは、11時58分だった。
(や、やったーーー!)
こたつにごろんとひっくり返る。
疲れよりも心地良い達成感の方が強かった。
テレビからは、新年の挨拶が聞こえた。
今年…いや、去年は、ついさっきまでのスリリングな執筆のおかげで、充実した年だったと思えるようになった。
(良い気分…今年はなんだか良い年になりそうだな…)
~Fin.
気が付けば、いつの間にかもう12月に入っていた。
つまり、今年もあと一か月を切ったということだ。
振り返ってみれば、今年は良いことも悪いこともない…よく言えば、平穏な年だった。
そんなだから、特に頑張ったようなことも何もない。
仕事は、元々、やりがいなんて感じたこともない。
ただ食べていくために働いているだけ。
恋愛も、ここ三年は彼氏がいない。
そして、いなくても特に寂しいとも思わなくなっていた。
趣味の創作も、どうもぱっとしない。
スランプとまではいわないものの、どうも集中出来なくて、気が向いた時に少し書くだけ。
以前みたいに、書く手が止まらないなんてことはなくなったことがどうにも寂しい。
そんな時…私は、みつけてしまったのだ。
あるサイトで開催されていた恋愛小説コンテストを。
最低文字数が10万文字、未公開の新作限定…そして、締め切りは12月31日の午後11時59分。
それを見た時、私の中で何かが熱く燃え上がった。
恋愛ものは私が一番得意とするジャンルだ。
今からだと、1日に3000文字ちょっと書けば、何とか締め切りには間に合う。
(やってやろうじゃないの!)
その日から、私はコンテスト用の小説に取り掛かった。
頭の中にぼんやりとあったネタを書くことにした。
地味でドジな女の子が、イケメンの御曹司と恋をして変わっていく、所謂、シンデレラストーリーだ。
恋愛ものならいくらでもアイディアは出て来るけど、今まではそれを小説化する気力がなかった。
またいつか時間のある時に書こうと思うと、なかなか書けなかったのだけど、締め切りがあるととても集中出来た。
この分なら楽勝。
……そう思ってたけど、まさかのインフルにかかって、一週間寝込んでしまった。
その後も、残業があったり忘年会があったり…
まさに時間との戦いとなった。
仕事が休みになって、ようやく書けると思ったら、友達に呼び出されたり、長電話がかかってきたり…
そして、いつの間にやら締め切りの当日となっていた。
もう9割は書けたけど、完結は出来てない。
私は時計を気にしながら、必死に書いた。
なにがなんでも完結させなければ!
頭の中には、それしかなかった。
気付けば、締め切りまであと10分しかない!
ここまで来て諦めることなんて絶対に出来ない。
私は必死に書き続けた。
(出来た!!)
完結ボタンを押したのは、11時58分だった。
(や、やったーーー!)
こたつにごろんとひっくり返る。
疲れよりも心地良い達成感の方が強かった。
テレビからは、新年の挨拶が聞こえた。
今年…いや、去年は、ついさっきまでのスリリングな執筆のおかげで、充実した年だったと思えるようになった。
(良い気分…今年はなんだか良い年になりそうだな…)
~Fin.
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
転移先は薬師が少ない世界でした
饕餮
ファンタジー
★この作品は書籍化及びコミカライズしています。
神様のせいでこの世界に落ちてきてしまった私は、いろいろと話し合ったりしてこの世界に馴染むような格好と知識を授かり、危ないからと神様が目的地の手前まで送ってくれた。
職業は【薬師】。私がハーブなどの知識が多少あったことと、その世界と地球の名前が一緒だったこと、もともと数が少ないことから、職業は【薬師】にしてくれたらしい。
神様にもらったものを握り締め、ドキドキしながらも国境を無事に越え、街でひと悶着あったから買い物だけしてその街を出た。
街道を歩いている途中で、魔神族が治める国の王都に帰るという魔神族の騎士と出会い、それが縁で、王都に住むようになる。
薬を作ったり、ダンジョンに潜ったり、トラブルに巻き込まれたり、冒険者と仲良くなったりしながら、秘密があってそれを話せないヒロインと、ヒロインに一目惚れした騎士の恋愛話がたまーに入る、転移(転生)したヒロインのお話。
転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです
れもんぴーる
ファンタジー
実母に殺されそうになったのがきっかけで前世の記憶がよみがえった赤ん坊カティ。冷徹で優秀な若き宰相エドヴァルドに引き取られ、カティの秘密はすぐにばれる。エドヴァルドは鬼畜ぶりを発揮し赤ん坊のカティを特訓し、諜報員に仕立て上げた(つもり)!少しお利口ではないカティの言動は周囲を巻き込み、無表情のエドヴァルドの表情筋が息を吹き返す。誘拐や暗殺などに巻き込まれながらも鬼畜な義父に溺愛されていく魔法のある世界のお話です。
シリアスもありますが、コメディよりです(*´▽`*)。
*作者の勝手なルール、世界観のお話です。突っ込みどころ満載でしょうが、笑ってお流しください(´▽`)
*話の中で急な暴力表現など出てくる場合があります。襲撃や尋問っぽい話の時にはご注意ください!
《2023.10月末にレジーナブックス様から書籍を出していただけることになりました(*´▽`*)
規定により非公開になるお話もあります。気になる方はお早めにお読みください! これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!》
大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました。
井藤 美樹
ファンタジー
たぶん、私は異世界転生をしたんだと思う。
うっすらと覚えているのは、魔法の代わりに科学が支配する平和な世界で生きていたこと。あとは、オタクじゃないけど陰キャで、性別は女だったことぐらいかな。確か……アキって呼ばれていたのも覚えている。特に役立ちそうなことは覚えてないわね。
そんな私が転生したのは、科学の代わりに魔法が主流の世界。魔力の有無と量で一生が決まる無慈悲な世界だった。
そして、魔物や野盗、人攫いや奴隷が普通にいる世界だったの。この世界は、常に危険に満ちている。死と隣り合わせの世界なのだから。
そんな世界に、私は生まれたの。
ゲンジュール聖王国、ゲンジュ公爵家の長女アルキアとしてね。
ただ……私は公爵令嬢としては生きていない。
魔族と同じ赤い瞳をしているからと、生まれた瞬間両親にポイッと捨てられたから。でも、全然平気。私には親代わりの乳母と兄代わりの息子が一緒だから。
この理不尽な世界、生き抜いてみせる。
そう決意した瞬間、捨てられた少女の下剋上が始まった!!
それはやがて、ゲンジュール聖王国を大きく巻き込んでいくことになる――
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。
トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。
謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。
「え?ここどこ?」
コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。
――え? どうして
カクヨムにて先行しております。
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる