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出会い
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「あっ!危ないっ!」
「きゃっ!」
部活が終わり、家に向かって薄暗がりの中を自転車で走ってた私は、曲がり角で対向してきた自転車とぶつかりそうになり…
すんでのところで、どうにかぶつかりはしなかったものの、私は横転。
「大丈夫!?顔が真っ青だけど、気分悪くない?」
「あ、は、はい。
だ……」
顔を上げた時、私の目に映ったのは…
なんと、憧れの野口先輩だった。
私の顔は急に高い熱を帯びる。
「あれ?今度は真っ赤だよ。
熱でも出たのかな?どこかぶつけた?」
「い、いえ…だ、大丈夫です。
ちょっとびっくりしただけです。」
そう言うのが私には精いっぱい。
無様に転んだところを見られた恥ずかしさと野口先輩と初めて会話が出来た嬉しさに、口から心臓が飛び出しそうだった。
「本当に大丈夫?
病院に行こうか?」
「い、いえ…本当に大丈夫です。」
私は起き上がり、平静を装いながら制服のスカートをはたく。
足に痛みがあったけど、もちろんそんなことは言わない。
野口先輩は、私の自転車を起こしてくれた。
「家まで送るよ。」
「いえ、そんな……」
私は遠慮したけれど、心配だからって野口先輩は着いてきてくれた。
「そっか…二年なんだね。
僕の弟も二年なんだよ。」
「そ、そうなんですか。」
知らないふりをしたけれど、そんなこと、前から知ってる。
クラスは違うけど、どんな人なのか気になって、こっそり見に行ったこともある。
兄弟とはいえ、二人はあまり似ていない。
二人ともイケメンだけど、先輩は真面目で物静かなタイプで、弟さんはやんちゃなタイプ。
部活も、先輩は美術部で、弟さんはサッカー部だ。
昨年、生徒会長に立候補した野口先輩を知って、私は、一瞬で恋に落ちた。
所謂、一目惚れというやつだ。
それから、先輩のことだけを見て、早や一年半…
人一倍内気な私には何も出来るはずもなく、ただただ、憧れていただけ。
それなのに、こんな出会いがあるなんて、まるで夢みたいだ。
だけど、残念なことに私の家はすぐ傍で…
「あ、あの…家、そこなんで…」
私は手前の道で、家を指さす。
「そう…もし、なにかあったら大変だから…
LINE交換しとこうよ。」
「は、はい。」
「じゃあ、またね。」
先輩は真っ白な歯を見せて微笑むと、片手を振って走り出した。
私は先輩の姿が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた。
「きゃっ!」
部活が終わり、家に向かって薄暗がりの中を自転車で走ってた私は、曲がり角で対向してきた自転車とぶつかりそうになり…
すんでのところで、どうにかぶつかりはしなかったものの、私は横転。
「大丈夫!?顔が真っ青だけど、気分悪くない?」
「あ、は、はい。
だ……」
顔を上げた時、私の目に映ったのは…
なんと、憧れの野口先輩だった。
私の顔は急に高い熱を帯びる。
「あれ?今度は真っ赤だよ。
熱でも出たのかな?どこかぶつけた?」
「い、いえ…だ、大丈夫です。
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そう言うのが私には精いっぱい。
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私は起き上がり、平静を装いながら制服のスカートをはたく。
足に痛みがあったけど、もちろんそんなことは言わない。
野口先輩は、私の自転車を起こしてくれた。
「家まで送るよ。」
「いえ、そんな……」
私は遠慮したけれど、心配だからって野口先輩は着いてきてくれた。
「そっか…二年なんだね。
僕の弟も二年なんだよ。」
「そ、そうなんですか。」
知らないふりをしたけれど、そんなこと、前から知ってる。
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兄弟とはいえ、二人はあまり似ていない。
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「そう…もし、なにかあったら大変だから…
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「は、はい。」
「じゃあ、またね。」
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私は先輩の姿が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた。
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