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故郷の味
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(さ、む……)
吹きすさぶ風に、俺は背を丸め、身を固くした。
今年は暖冬なんて言ったのは、どこの予報士だ。
凍える程、寒いじゃないか。
俺は心の中で悪態を吐きながら、駅への道を歩いていた。
こんな寒い日に、なんで残業なんてしなきゃならんのだ。
寒いと、なんだか愚痴ばかりがわきあがってくる。
(……ん?)
どこからか漂う、だしの良いにおい…
うどんのにおいだ。
すぐ傍に、年季の入った『うどん』の暖簾をみつけた。
俺は、吸い寄せられるようにその店に入って行った。
割と遅い時間だというのに、店の中はけっこう混んでいた。
うどんと人の熱気なのか、はたまた暖房のせいなのか、店に入った途端に温かさに包まれた。
俺は唯一空いていた窓側のテーブルに着いた。
客の食べてるうどんをちらりと見ると、うどんのだしが薄い色をしている。
関西育ちの俺としては、急にテンションがあがった。
「いらっしゃい。何になさいますか?」
「……きつねうどんと……たらこと昆布のおにぎり。」
温まりたいだけだと思っていたが、空腹だったことが急に思い出された。
考えてみれば、夕方に菓子パンを一つ食べただけだった。
そりゃあ、腹も減るってもんだ。
「はい、きつねうどんとおにぎりです。」
ほどなくして、注文した品が届いた。
湯気で、窓のガラスがさらに曇る。
それを手でこすると、窓の外に白いものがちらついているのが見えた。
(……寒いはずだな。)
まずは、うどんのだしを飲む。
慣れ親しんだ昆布主体のだしの味に、体と心がじわっと温もった。
あげも甘くふっくらして、だしをたっぷりと吸っている。
駅の近くにこんな店があったなんて、どうして気が付かなかったんだろう?
(また来よう…)
そんなことを思いながら、俺は昆布のおにぎりにかぶりついた。
吹きすさぶ風に、俺は背を丸め、身を固くした。
今年は暖冬なんて言ったのは、どこの予報士だ。
凍える程、寒いじゃないか。
俺は心の中で悪態を吐きながら、駅への道を歩いていた。
こんな寒い日に、なんで残業なんてしなきゃならんのだ。
寒いと、なんだか愚痴ばかりがわきあがってくる。
(……ん?)
どこからか漂う、だしの良いにおい…
うどんのにおいだ。
すぐ傍に、年季の入った『うどん』の暖簾をみつけた。
俺は、吸い寄せられるようにその店に入って行った。
割と遅い時間だというのに、店の中はけっこう混んでいた。
うどんと人の熱気なのか、はたまた暖房のせいなのか、店に入った途端に温かさに包まれた。
俺は唯一空いていた窓側のテーブルに着いた。
客の食べてるうどんをちらりと見ると、うどんのだしが薄い色をしている。
関西育ちの俺としては、急にテンションがあがった。
「いらっしゃい。何になさいますか?」
「……きつねうどんと……たらこと昆布のおにぎり。」
温まりたいだけだと思っていたが、空腹だったことが急に思い出された。
考えてみれば、夕方に菓子パンを一つ食べただけだった。
そりゃあ、腹も減るってもんだ。
「はい、きつねうどんとおにぎりです。」
ほどなくして、注文した品が届いた。
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それを手でこすると、窓の外に白いものがちらついているのが見えた。
(……寒いはずだな。)
まずは、うどんのだしを飲む。
慣れ親しんだ昆布主体のだしの味に、体と心がじわっと温もった。
あげも甘くふっくらして、だしをたっぷりと吸っている。
駅の近くにこんな店があったなんて、どうして気が付かなかったんだろう?
(また来よう…)
そんなことを思いながら、俺は昆布のおにぎりにかぶりついた。
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