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私は山茶花

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「あ、ママ…綺麗なお花~!」

 「綺麗ね、このお花は『椿』っていうのよ。」

 「へぇ~…」

 小さな子供とそのお母さんが、私の前を歩いて行く。



 (子供に嘘を教えちゃいけないよ。)



この花は椿じゃなくて山茶花。
 私の花だよ…







 私程、男運の悪い女は滅多にいないだろう。
 中1の時、初めて同じクラスの男子と付き合った時から、私は男たちにずっと泣かされっぱなしだった。
 浮気性の男、暴力をふるう男、金ばかりせびる男、異常に嫉妬深い男……



ぼろ雑巾のようになって、男はもうこりごりだと思っても、それでも男が寄って来る。
そしてまた酷い目に遭い、もう嫌だと思うのに、また次の男と出会ってしまう。



 適齢期と呼ばれる年になり、周りの友達が幸せな結婚をするのを見ていたら、今度こそは私も幸せになれるのではないかとそんな儚い希望を抱き、そしてまた裏切られる。



 「麗香は綺麗だから、男たちは高嶺の花だと思って諦めてしまうんだよ。」

 売れ残ってしまった私に、女友達はそんな慰めを言う。
きっと、心の底では私のことを笑っているくせに。



年を取るごとに、花弁を一枚ずつ落として醜く枯れていく山茶花に、私は自分自身を重ねてしまう。
山茶花は、毒のある毛虫に好かれる花だ。
たまごを産み付けられ、孵化した幼虫は山茶花の葉を食い散らす。



そう、私は山茶花…
花を散らせ、いつかは、毒虫たちにすべて食い尽くされてしまうのだろう。
その日はそう遠くないのかもしれない。



 私は山茶花の赤い花に、苦笑した。
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