1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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意外な出会い

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「ねぇ、どうかしら?」

 「私……今は仕事に専念したいっていうか、その……」

 「そう言わずに、見るだけでも見てみなさいよ。」

 堀江さんは微笑んでるけど、その目はけっこう威圧的だ。
いやだなんて、とても言えない雰囲気。



 (困ったな……)



 四畳半の部屋で、堀江さんと差し向かいで、私はワインを飲んでいる。
どう考えても、逃げ出せるような状況じゃない。



 「あら、これ、美味しいじゃない。」

 堀江さんは私が持って来たおつまみのカマンベールチーズを食べてそう言った。



 「これ、どこで買ったの?高いの?」

 「いえ、どこのスーパーでも売ってますよ。
そんなに高くもないです。」

 「へぇ…」



 堀江さんは、私と同じアパートの住人。
 私が風邪で高熱を出した時、たまたま堀江さんが回覧板を持って来て、苦しんでる私の介抱をしてくれたのが縁で仲良くなった。
 年は私よりずっと年上なんだけど、妙に気が合う。
 堀江さんは明るいし、気が利くし、とても良い人なんだけど、ただひとつ面倒なのは、独身の私をなんとか結婚させようと頑張ってくれること。
 今日はついに写真まで持って来た。



 「本当に良い人なのよ。
 彼が真面目だってことは、職場の人たちの折り紙付きよ。」

 「そうなんですか…」

 「ね、見るだけで良いから。」

 「はぁ…」

 40を目前にした私に持ってくる見合い話なんて、どうせろくなものじゃない。
 真面目だけが取り柄だなんて、きっと、頭がはげ散らかってるか、うらぶれたおじさんだと思う。
 人の容姿をとやかく言える立場でもないけど、それでもやっぱりそういう人は嫌だ。
でも、逃げ場はない。
 私は、仕方なく写真を開いた。



 (あ……)



 髪の毛はふさふさだった。
しかも、思ってたよりも若くて、けっこう格好良い。
でも、見た目が悪くないのにまだ独身だってことは、性格に難があるのかもしれない。



 「なんとかいう難しい研究をしてる人でね。
ずっと出会いがなかったらしいんだよ。
それに、とにかく真面目らしくってさ。
 女の扱いもうまくないらしいよ。」

ものすごい遊び人よりは、まだ良いかもしれない。
そんな風に思えたのは、やっぱりその人が格好良かったからかもしれないけど…



「えっと…とりあえず、会うだけ会ってみようかな…なんて…」

 「本当かい!?そりゃあ、良かった!」

 堀江さんは満面の笑みを浮かべた。
これから始まるかもしれない久しぶりの恋愛に、私は顔がにやけるのを必死にこらえた。
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