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意外な出会い
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「ねぇ、どうかしら?」
「私……今は仕事に専念したいっていうか、その……」
「そう言わずに、見るだけでも見てみなさいよ。」
堀江さんは微笑んでるけど、その目はけっこう威圧的だ。
いやだなんて、とても言えない雰囲気。
(困ったな……)
四畳半の部屋で、堀江さんと差し向かいで、私はワインを飲んでいる。
どう考えても、逃げ出せるような状況じゃない。
「あら、これ、美味しいじゃない。」
堀江さんは私が持って来たおつまみのカマンベールチーズを食べてそう言った。
「これ、どこで買ったの?高いの?」
「いえ、どこのスーパーでも売ってますよ。
そんなに高くもないです。」
「へぇ…」
堀江さんは、私と同じアパートの住人。
私が風邪で高熱を出した時、たまたま堀江さんが回覧板を持って来て、苦しんでる私の介抱をしてくれたのが縁で仲良くなった。
年は私よりずっと年上なんだけど、妙に気が合う。
堀江さんは明るいし、気が利くし、とても良い人なんだけど、ただひとつ面倒なのは、独身の私をなんとか結婚させようと頑張ってくれること。
今日はついに写真まで持って来た。
「本当に良い人なのよ。
彼が真面目だってことは、職場の人たちの折り紙付きよ。」
「そうなんですか…」
「ね、見るだけで良いから。」
「はぁ…」
40を目前にした私に持ってくる見合い話なんて、どうせろくなものじゃない。
真面目だけが取り柄だなんて、きっと、頭がはげ散らかってるか、うらぶれたおじさんだと思う。
人の容姿をとやかく言える立場でもないけど、それでもやっぱりそういう人は嫌だ。
でも、逃げ場はない。
私は、仕方なく写真を開いた。
(あ……)
髪の毛はふさふさだった。
しかも、思ってたよりも若くて、けっこう格好良い。
でも、見た目が悪くないのにまだ独身だってことは、性格に難があるのかもしれない。
「なんとかいう難しい研究をしてる人でね。
ずっと出会いがなかったらしいんだよ。
それに、とにかく真面目らしくってさ。
女の扱いもうまくないらしいよ。」
ものすごい遊び人よりは、まだ良いかもしれない。
そんな風に思えたのは、やっぱりその人が格好良かったからかもしれないけど…
「えっと…とりあえず、会うだけ会ってみようかな…なんて…」
「本当かい!?そりゃあ、良かった!」
堀江さんは満面の笑みを浮かべた。
これから始まるかもしれない久しぶりの恋愛に、私は顔がにやけるのを必死にこらえた。
「私……今は仕事に専念したいっていうか、その……」
「そう言わずに、見るだけでも見てみなさいよ。」
堀江さんは微笑んでるけど、その目はけっこう威圧的だ。
いやだなんて、とても言えない雰囲気。
(困ったな……)
四畳半の部屋で、堀江さんと差し向かいで、私はワインを飲んでいる。
どう考えても、逃げ出せるような状況じゃない。
「あら、これ、美味しいじゃない。」
堀江さんは私が持って来たおつまみのカマンベールチーズを食べてそう言った。
「これ、どこで買ったの?高いの?」
「いえ、どこのスーパーでも売ってますよ。
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「へぇ…」
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今日はついに写真まで持って来た。
「本当に良い人なのよ。
彼が真面目だってことは、職場の人たちの折り紙付きよ。」
「そうなんですか…」
「ね、見るだけで良いから。」
「はぁ…」
40を目前にした私に持ってくる見合い話なんて、どうせろくなものじゃない。
真面目だけが取り柄だなんて、きっと、頭がはげ散らかってるか、うらぶれたおじさんだと思う。
人の容姿をとやかく言える立場でもないけど、それでもやっぱりそういう人は嫌だ。
でも、逃げ場はない。
私は、仕方なく写真を開いた。
(あ……)
髪の毛はふさふさだった。
しかも、思ってたよりも若くて、けっこう格好良い。
でも、見た目が悪くないのにまだ独身だってことは、性格に難があるのかもしれない。
「なんとかいう難しい研究をしてる人でね。
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それに、とにかく真面目らしくってさ。
女の扱いもうまくないらしいよ。」
ものすごい遊び人よりは、まだ良いかもしれない。
そんな風に思えたのは、やっぱりその人が格好良かったからかもしれないけど…
「えっと…とりあえず、会うだけ会ってみようかな…なんて…」
「本当かい!?そりゃあ、良かった!」
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