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女子会

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(まずい…!30分も遅れた!)



 今日は、いつもより大切な女子会。
と、いうのも、三年前に結婚してアメリカに渡った真紀が、離婚して帰国したから。
 私と真紀は特に仲が良くて、将来、年を取った時…もしも、二人共独身だったら一緒に暮らそう…なんて話をしてた仲だった。
なのに、真紀は街で偶然知り合ったアメリカ人と、知り合って二週間で電撃結婚。
 私を裏切り(?)彼女はさっさとアメリカに行ってしまったのだ。



 (あ、あそこだ!)



 今日の会場は、小洒落た居酒屋。
 個室を取ってあるらしい。
 息を切らせ、階段を駆け上がる。



 「いらっしゃいませ。」

 「あ、あの…大沢で予約してあると思うんですが…」

 「こちらです。」



 居酒屋とは思えない、上品で落ち着いた店内を案内してもらう。
 細い通路の突き当りの扉を開けると、金木犀のような香りが鼻先をかすめた。



 「希のぞみ、遅いじゃない!」

 「ごめーん!出がけに急ぎの仕事を押し付けられちゃって…」

 「希~!」

 突然、抱き着いて来たのは真紀だった。
 香水と日本酒の入り混じったにおいがした。
 私も真紀の体を抱き締める。



 「真紀!ひさしぶり~!」

 「希~!会いたかったよ~!」

 真紀の瞳は潤んでいた。
すでに酔いが回って、感情が高ぶっているのだろう。
 真紀はお酒には弱いくせに、度数の高い日本酒が好きだから。



 「とにかく、ふたりとも座りなよ。」

 私達は織江の言葉に従った。



 「ねぇ、なんか金木犀の香りがしない?」

 私は席に着くなり、部屋の中を見渡した。
 花瓶にさしてあるのは、菊の花だった。



 「これよ、これ!」

 七海がグラスを前に突き出す。



 「……何?」

 「桂花陳酒ケイカチンチュウっていうんだって。
すごく良い香りじゃない?
 金木犀の花をワインに漬けたお酒で、クレオパトラも飲んでたんだって。」

 「七海、クレオパトラじゃなくて、楊貴妃だってば!」

 亜矢の突っ込みにみんなが笑う。



 「希もどう?」

 「ううん、私はいつもの…」

 「そう言うと思った!」

 真紀は、日本酒をグラスについでくれた。



 「希…乾杯しよう。」

 「うん、何に乾杯?」

 「私達の友情に…!」

 良く言うよ…私を置いて、アメリカに飛んでったくせに…
心の底ではそうも思うけど、真紀が日本に戻って来てくれたことは正直嬉しい。



 「ちょっとちょっと、乾杯ならみんなでしようよ!」

 頬を赤く染めた皆が、グラスを手に持つ。



 「かんぱーい!」

グラスを合わせた音が部屋の中に広がった。
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