236 / 401
親子寿司
1
しおりを挟む
(やっぱり、日本の寿司はうまいな…)
一皿百円でもこの味だ。
日本は良い!最高だ。
俺は、ニューヨークの寿司レストランで食べた寿司のことを思い出した。
毒々しい色合い…
寿司とは思えないスパイシーな味…
特に、生クリームやチョコや肉の入った手巻き寿司は地獄だった。
ギリギリの生活の中で、清水の舞台から飛び降りるようなつもりで入った人気の寿司レストランは、まさに悪夢以外の何者でもなかったな。
しかも、値段も馬鹿高かった。
ニューヨークに住んだ五年の間で、一番強烈な記憶がこれだっていうのが本当に情けない。
世界一のダンサーになる…!
そんな夢を抱いて向かったニューヨーク…
田舎者の両親は、俺がまるで宇宙にでも行くかのように嘆き悲しんだ。
そんな遠い所に行ったら、何かあっても会いに行けないと、まるで今生の別れのように涙を流す両親を振り切り、俺はニューヨークに向けて旅立った。
だけど、そこで俺が知ったのは、自分がいかに身の程知らずだったかということ。
俺には、世界一どころか、日本一になれるだけの実力もなかった。
嫌という程そのことを突きつけられたけど、プライドが邪魔をして帰るに帰れず、死に物狂いで五年耐えて、そしてボロ雑巾のようになった。
金もなく、精神的にも追い詰められていた俺は、情けないことに両親に救いを求めた。
両親は、何も言わず俺のSOSに応えてくれた。
両親にとっては宇宙みたいに思われるニューヨークに、ふたりで俺を迎えに来てくれたんだ。
やつれた二人の顔を見た時、俺は涙が止まらなかった。
自然しかない俺の故郷と両親と時間が、傷だらけになった俺の心を癒してくれた。
俺はダンサーになる夢を叶えることは出来なかった。
だけど、父さんは言ってくれたんだ。
また違う夢を探せば良いって。
言われてみればそうかもしれない。
自然しかないこの田舎でも、探せば叶えられる夢はあるのかもしれない。
「父さん…あなご食べる?」
「あぁ、取ってくれ。」
車で一時間のこの回転寿司に、親子で来るのが最近のささやかな楽しみだ。
あんなにへんてこりんな寿司が、あんなに馬鹿高いのに、いつもお客がいっぱいだなんて、あの町はまともじゃない。
(帰って来て良かった…)
強がりかもしれないが、俺はそう思った。
一皿百円でもこの味だ。
日本は良い!最高だ。
俺は、ニューヨークの寿司レストランで食べた寿司のことを思い出した。
毒々しい色合い…
寿司とは思えないスパイシーな味…
特に、生クリームやチョコや肉の入った手巻き寿司は地獄だった。
ギリギリの生活の中で、清水の舞台から飛び降りるようなつもりで入った人気の寿司レストランは、まさに悪夢以外の何者でもなかったな。
しかも、値段も馬鹿高かった。
ニューヨークに住んだ五年の間で、一番強烈な記憶がこれだっていうのが本当に情けない。
世界一のダンサーになる…!
そんな夢を抱いて向かったニューヨーク…
田舎者の両親は、俺がまるで宇宙にでも行くかのように嘆き悲しんだ。
そんな遠い所に行ったら、何かあっても会いに行けないと、まるで今生の別れのように涙を流す両親を振り切り、俺はニューヨークに向けて旅立った。
だけど、そこで俺が知ったのは、自分がいかに身の程知らずだったかということ。
俺には、世界一どころか、日本一になれるだけの実力もなかった。
嫌という程そのことを突きつけられたけど、プライドが邪魔をして帰るに帰れず、死に物狂いで五年耐えて、そしてボロ雑巾のようになった。
金もなく、精神的にも追い詰められていた俺は、情けないことに両親に救いを求めた。
両親は、何も言わず俺のSOSに応えてくれた。
両親にとっては宇宙みたいに思われるニューヨークに、ふたりで俺を迎えに来てくれたんだ。
やつれた二人の顔を見た時、俺は涙が止まらなかった。
自然しかない俺の故郷と両親と時間が、傷だらけになった俺の心を癒してくれた。
俺はダンサーになる夢を叶えることは出来なかった。
だけど、父さんは言ってくれたんだ。
また違う夢を探せば良いって。
言われてみればそうかもしれない。
自然しかないこの田舎でも、探せば叶えられる夢はあるのかもしれない。
「父さん…あなご食べる?」
「あぁ、取ってくれ。」
車で一時間のこの回転寿司に、親子で来るのが最近のささやかな楽しみだ。
あんなにへんてこりんな寿司が、あんなに馬鹿高いのに、いつもお客がいっぱいだなんて、あの町はまともじゃない。
(帰って来て良かった…)
強がりかもしれないが、俺はそう思った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
souls step
文月
ファンタジー
勧請とは、神様を分霊して別の神社に移すことをいう。
神様を分霊する際、その依り代としてお札や鏡が使われることがある。
一方。神が現世に現人神として、誰にも気付かれず暮らしていることは少なからずある。しかしその霊力の大きさ故、日常生活に支障をきたしている例は少なからずある。
「裏に近い」異能力をもつ少年、西遠寺 彰彦が、学生時代に出会ったのは不思議な少女だった。
「体が弱く、外で遊べないけれど、遊びたい」と訴えたその少女は「力を貸してほしい」と彰彦に頼んだ。彼女は彰彦がもつ「鏡の秘術」を使い自分そっくりの臣霊「尊」をつくりそれを依り代に自分を分霊した。
彼女によってその記憶が奪われた彰彦が再びその記憶を思い出したのは、あの時の少女「大和 天音」の葬式だった。
彼女は、彰彦の母の姉の子だったのだ。
そのことに驚いた彰彦の前に現れたのが、彰彦の母の妹の子‥こちらもあったことがない、従兄弟である郷宇 優磨だった。
小説家になろうさんで「彼がこの世に生まれた経緯について私が知っていることは何もない。だけど、今も彼は私の傍にいます」という題名で投稿させてもらっていた分の加筆修正分中心です。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
男女の友人関係は成立する?……無理です。
しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。
ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。
ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。
それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。
その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。
冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します
みおな
ファンタジー
王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。
それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。
死んだはずの私が目覚めたのは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる